経営分析とは?目的・指標・フレームワークなどをまとめて解説
経営分析の目的は?
経営分析のフレームワークを把握したい
経営分析に役立つツールを知りたい
企業経営においては、逐一自社や外部の状況を把握しておかないと、成長のチャンスをのがすどころか経営が知らぬ間に傾く結果にもなりかねません。そこで必要になるのが経営分析です。これにより、自社の経営状況について現状把握ができ、今後の方針を定められます。
ただ、経営分析に役立つ手法・フレームワーク・ツールについて、あまりよくわからない方もいるかもしれません。また、経営分析には押さえておくことが必須のポイントもあります。
この記事では、経営分析の目的や役立つフレームワークの種類、分析ポイントなどを紹介します。
経営分析の目的
経営分析は、決算書や財務諸表より企業の経営状況を客観的に評価する手法です。収益性・安全性・生産性・成長性などの経営指標を算出します。併せて、競合他社の動向や市場状況など外部要因も考慮し、定量的・定性的両面から企業の経営状態を総合的に分析するものです。ここでは、経営分析の目的を4つ紹介します。
- 経営状況の客観的分析
- 自社の強み・弱みを特定
- 経営方針の決定
- 投資の判断材料として活用
それでは1つずつ紹介します。
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経営状況の客観的分析
経営分析の目的の1つ目は、経営状況の客観的分析です。
経営分析では、決算書や財務諸表などの定量的情報を基に、経営状況を客観的に判断できます。単純に黒字であればよいとか限らず、売上が高くても利益が少ないケースもあるでしょう。そのため、経営状況を主観的に判断することはリスクが高く、数字で客観的に基づき分析することで、より正確に経営状況を把握できます。
自社の強み・弱みを特定
経営分析の目的の種類の2つ目は、自社の強み・弱みを特定することです。
経営分析で事業ごとの売上高や利益を詳しく見ることで、自社の強みと弱みを客観的に判断できます。例えば、売上は好調でも利益率の低い事業があれば、それは改善すべき弱点として認識可能です。また、数値データに基づく分析を通じ、普段は気づきにくい潜在的な課題も見つけやすいでしょう。経営者はこれらの情報を活用して、早期に必要な対策を立案・実行できます。
経営方針の決定
経営分析の目的の3つ目は、経営方針の決定です。
経営分析の過程で、自社に関する様々な客観的データを得られます。このデータは、経営方針の策定時に大いに役立つでしょう。経営方針は組織全体が従うべき指標で、その内容に説得力がなければ組織は一体となって動けません。経営分析の結果に基づいて方針を立てることで、組織メンバーの納得感を高め、より効果的な経営戦略を実現できるでしょう。
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投資の判断材料として活用
経営分析の目的の4つ目は、投資の判断材料として活用することです。
投資家や金融機関は、リスクの低い企業に優先的に投資したいと考えます。経営分析で自社の経営状況を客観的に示し、リスクの低さをアピールできれば、資金調達を有利に進められるでしょう。継続的に経営分析・改善活動を進めれば、投資や融資を受けやすい健全な経営体質を築けます。
経営分析で用いられる手法・指標
ここでは、経営分析で用いられる手法・指標を5つ紹介します。
- 収益性分析
- 安全性分析
- 生産性分析
- 活動性分析
- 成長性分析
それでは1つずつ紹介します。
収益性分析
経営分析で用いられる手法・指標の1つ目は、収益性分析です。
収益性分析を通じ、企業の稼ぐ力を測定できます。主に売上高総利益率と売上高営業利益率の2つの指標があり、前者は総売上から原価を引いた粗利益の割合、後者は本業での収益力をそれぞれ示す指標です。これらの指標が高いほど、少ないコストで効率的に収益を上げています。このことは、不況への耐性や資金調達にも有利です。
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安全性分析
経営分析で用いられる手法・指標の2つ目は、安全性分析です。
安全性分析は、企業の支払い能力と財務の安定性を評価するものです。流動比率は短期的な支払い能力を示し、200%を超えると堅実な経営とされます。また、自己資本比率は総資本に対する返済不要な自己資本の割合を表し、この比率が高いほど財務基盤が安定しているとされています。ただし、過度に負債を避けることも、成長性の観点では一概によいこととは言えません。
生産性分析
経営分析で用いられる手法・指標の3つ目は、生産性分析です。
生産性分析では、人材・設備・資金など経営資源の活用効率を測定します。労働生産性は従業員一人当たりの付加価値創出力を、資本生産性は投入資本に対する付加価値の創出効率をそれぞれ示す指標です。これらの指標が高いほど、経営資源が効果的に活用されていることを意味するため、企業の持続的成長性が明らかになります。
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活動性分析
経営分析で用いられる手法・指標の4つ目は、活動性分析です。
活動性分析では、企業の資本運用効率を評価します。総資本回転率は資本が売上として何回回収され再投資されるか、固定資産回転率は設備投資の効率性をそれぞれ示す指標です。これらの指標は、より少ない資本でより多くの売上を実現できているか判断する基準であり、経営の根幹を評価できます。
成長性分析
経営分析で用いられる手法・指標の5つ目は、成長性分析です。
成長性分析では、企業の発展度合いを評価します。売上高増加率は前期比での売上の伸びを、経常利益増加率は収益力の成長をそれぞれ表すものです。これらがプラスであれば企業は成長局面にあると判断できます。ただ、急激な成長は運営上のリスクも伴うため、バランスの取れた成長がベストです。
経営分析に便利な財務諸表
ここでは、経営分析に便利な財務諸表を3つ紹介します。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
それでは1つずつ紹介します。
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貸借対照表
経営分析に便利な財務諸表の1つ目は、貸借対照表です。
貸借対照表は、決算時点における企業の財務状態を示す書類です。会社が保有する資産と、負債および純資産を左右に分けて記載します。その合計額が必ず一致することから、「バランスシート」とも呼ばれます。この表を分析することで、企業の財務状況を客観的に把握することが可能です。
損益計算書
経営分析に便利な財務諸表の2つ目は、損益計算書です。
損益計算書は、一会計期間における企業の経営成績を表す財務諸表として活用できます。売上高や受取利息などの収益より、買掛金や支払利息などの費用を差し引くことで、企業の利益や損失を明確に示せます。これにより、企業の収益力を正確に評価できるでしょう。
キャッシュフロー計算書
経営分析に便利な財務諸表の3つ目は、キャッシュフロー計算書です。
キャッシュフロー計算書は、企業における現金および現金同等物の動きを把握するために役立ちます。現金の流入(キャッシュ・イン)と流出(キャッシュ・アウト)を記録することで、企業の手元資金の状況を明確に理解できます。
経営分析でよく使われるフレームワーク
ここでは、経営分析でよく使われるフレームワークを4つ紹介します。
- SWOT分析
- PEST分析
- 3C分析
- VRIO分析
それでは1つずつ紹介します。
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SWOT分析
経営分析でよく使われるフレームワークの1つ目は、SWOT分析です。
SWOT分析は、以下4つの切り口から企業を分析するフレームワークです。
▼SWOT分析の切り口
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部要因 | S(Strengths:強み) | W(Weaknesses:弱み) |
外部要因 | O(Opportunities:機会) | T(Threats:脅威) |
これらを掛け合わせて「クロスSWOT分析」を行います。これにより、強みを活かした機会創出や、弱みと脅威を踏まえたリスク対策など、状況に応じ具体的な経営戦略を立案できます。
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PEST分析
経営分析でよく使われるフレームワークの2つ目は、PEST分析です。
PEST分析では、企業を取り巻くマクロ環境について以下4つの切り口から分析します。
▼PEST分析の切り口
P(Politics) | 政治 | 税制や法律など |
E(Economy) | 経済 | 景気や株価など |
S(Society) | 社会 | 人口変化やトレンドなど |
T(Technology) | 技術 | IT技術や特許など |
3〜5年後の中長期的な視点で環境変化を予測し、それに基づいて経営戦略を策定するためにおすすめです。
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3C分析
経営分析でよく使われるフレームワークの3つ目は、3C分析です。
3C分析は、以下3つの切り口から自社が市場で立っているポジションを分析する手法です。競合や顧客の視点も取り入れることで差別化戦略を立案しやすく、新規事業立ち上げやマーケティング戦略立案・見直しに役立ちます。
▼3C分析の切り口
・顧客(Customer)
・競合(Competitor)
・自社(Company)
VRIO分析
経営分析でよく使われるフレームワークの4つ目は、VRIO分析です。
以下4つの切り口から自社の経営資源を分析し、自社が市場でどのような競争優位性をもっているか評価するフレームワークです。
▼VRIO分析の切り口
V(Value) | 経済的価値 | 売上や社会への貢献度 |
R(Rarity) | 希少性 | 競合他社と比較した希少度 |
I(Inimitabilit) | 模倣可能性 | 模倣されにくさ(独自性) |
O(Organization) | 組織 | 経営資源を継続的に活用できる組織体制の有無 |
経営分析に役立つツール
ここでは、経営分析に役立つツールを2つ紹介します。
- Excel
- BIツール
それでは1つずつ紹介します。
Excel
経営分析に役立つツールの1つ目は、Excelです。
多くのユーザーにとって馴染み深い表計算ソフトであるExcelは、財務諸表の作成や基本的な経営指標の算出に活用できます。ただ、基本的なデータ管理や分析であればExcelでも対応できるものの、大規模なデータ処理や複雑な可視化には不向きです。
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BIツール
経営分析に役立つツールの2つ目は、BIツールです。
BIツールは、高度なデータ分析・可視化に役立ちます。Excelなど様々な形式のデータを統合し、多角的な分析や表現が可能です。ただし、活用にはツールの専門知識が必要であるため、まずはExcelで基本的なデータ管理を行う方法を覚えましょう。
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経営分析のポイント
ここでは、経営分析のポイントを3つ紹介します。
- データ管理の徹底
- 分析方法の使い分け
- 多角的な分析
それでは1つずつ紹介します。
データ管理の徹底
経営分析のポイントの1つ目は、データ管理の徹底です。
経営分析は客観的データで判断を行うため、そのデータ自体に誤りがあると分析結果も不正確になり、経営判断に大きな影響を及ぼすリスクがあります。そのため、日々の記帳作業を正確に行い、定期的な点検の仕組みを整えましょう。また、財務三表などのデータでは誰でも同じ事実を把握できるよう、シンプルかつ整理された形で管理することが欠かせません。
分析方法の使い分け
経営分析のポイントの2つ目は、分析方法の使い分けです。
経営分析を行うときには、自社の状況に合った適切な手法を見極めることが欠かせません。例えば、サービス業では付加価値労働生産性が重要ですが、製造業では棚卸資産回転率や固定資産回転率などが重要です。業種・業態・企業の状況により重視すべき指標は異なるため、自社に適した分析指標を優先的に選定でき、効率的な分析につながります。
多角的な分析
経営分析のポイントの3つ目は、多角的な分析です。
経営分析では、自社の状況把握だけでなく同業種や他業種とも比較し、多角的視点で分析を行いましょう。より効率的なデータ活用には、経営分析に特化したツールの導入も有効な選択肢です。このようなツールを活用すれば、データ収集や資料作成を効率化でき、より充実した分析が可能です。
まとめ
この記事では、経営分析の目的や役立つフレームワークの種類、分析ポイントなどを紹介しました。
売上分析は、決算書や財務諸表より企業の経営状況を客観的に評価する手法です。経営状況の客観的分析や経営方針の決定などが目的で、収益性分析などの手法が用いられます。また、貸借対照表などの財務諸表やSWOT分析などのフレームワークを活用することも一般的です。
少ないデータであればExcelでもデータ分析は可能ですが、データの規模が大きければBIツールの活用がおすすめです。分析方法の使い分けや多角的な分析で、確実に経営分析を成功させましょう。