事業戦略の立て方とは?基礎的な知識から立て方の方法や具体的なフレームワークを総まとめ!
事業戦略について知りたい
事業戦略の立て方について知りたい
事業戦略を立てるための分析フレームワークについて知りたい
事業戦略をいざ立てようとしても何から手を付けていいのかわからなかったり、そもそも事業戦略と経営戦略は何が違うのかわからなかったりする方もいるのではないでしょうか。
今回は、事業戦略を立てるための前提知識である事業戦略の概要・経営戦略の違いなどを解説したのちに、事業戦略の策定のステップと主要な分析フレームワークについて紹介していきます。新規事業の立ち上げ、既存事業の見直しをこれからしていく方にも必見の内容になっております。是非ご一読ください。
事業戦略の立て方を考えるための前提知識
ここでは、事業戦略の立て方を考えるための前提知識について解説します。
- 事業戦略とは?
- 事業戦略と経営戦略の違い
- 事業戦略と機能戦略の違い
それでは、1つずつ解説します。
事業戦略とは?
前提知識の1つ目は、事業戦略の概要についてです。事業戦略とは、企業が長期的な目標を達成するために実行する具体的な計画や方針のことです。事業戦略は、市場の需要や競合環境、技術の進化などを考慮して、事業の方向性や競争優位を確立するための戦略を決定します。事業戦略は、ヒト・モノ・カネの経営資源をどのように分配するのか適切に管理し、市場ニーズを把握し他社との差別化による競争優位性を確保することを中心に検討します。
事業戦略は、あくまで事業ごとの目的を達成するための計画とその策定のことをさし、会社全体の戦略ではない点は、認識しておくようにしましょう。
事業戦略と経営戦略の違い
前提知識の2つ目は、事業戦略と経営戦略の違いについてです。事業戦略は、特定の事業部門や事業領域について、それらが競争上の優位性を確保し、長期的な目標を達成するために実行する具体的な計画や方針を決定することを指します。例えば、新しい市場に参入するための戦略、製品開発戦略、販売戦略などがあります。
一方、経営戦略は、企業全体の戦略であり、事業戦略を統合し、企業全体が長期的な目標を達成するために実行する具体的な計画や方針を決定することを指します。経営戦略には、事業戦略、資本戦略、人事戦略、財務戦略などが含まれます。経営戦略は、企業全体の戦略を整理し、統合することで、企業全体が長期的な目標を達成するために、効率的に動き回ることができるようになります。
事業戦略と機能戦略の違い
前提知識の3つ目は、事業戦略と機能戦略の違いについてです。機能戦略は、企業の中で行われる特定のタスクや業務について、それらが高い品質を提供し、長期的な目標を達成するために実行する具体的な計画や方針を決定することを指します。機能戦略は、企画・製造・販売ごとの戦略のことをさし、事業戦略を実行するための現場レベルに落とし込んだ具体的な戦略と言えます。
事業戦略の立て方
ここでは、事業戦略の立て方について解説します。
- 目的・ビジョン・定量的な目標の設定を行う
- 現状分析をする
- 事業戦略の方向性の策定
- 実現可能性の評価(フィジビリティスタディ)
- 具体的な施策を決めて実行する
それでは、1つずつ解説します。
目的・ビジョン・定量的な目標の設定を行う
1つ目のステップは、目的・ビジョン・定量的な目標の設定を行うことです。これらの目標は、事業戦略を立てる上で重要なものであり、指針となります。
目標を設定する際には、以下のような観点を考慮することが重要です。
観点 | 補足説明 |
SMART原則 | Specific(具体的)、Measurable(計測可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限付き) |
見通し | 目標を達成するために必要な時間や費用、リソースなどを考慮 |
優先順位 | 目標を優先順位順に並べることで、最も重要なものから順に取り組む |
長期的な目標を明確に定めることで、事業戦略を立てる上での指針を確立し、目指すべき方向を明確にすることができます。また、可能な限り定量的な数値の目標を持つことで達成率がわかり、今後の戦略の方針が見えてきます。
現状分析をする
2つ目のステップは、現状分析です。分析により、企業の現状、市場環境、競合環境、技術の進化などを明らかにすることができ、自社の競争力を把握することができます。
分析には、以下のような手法が用いられます。
分析手法 | 補足説明 |
PEST分析 | 政治、経済、社会、技術などの外部環境を分析 |
SWOT分析 | 企業のStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)を分析 |
ファイブフォース分析 | 自社のさらされている脅威を競合の競争力、新規参入の脅威、バイヤー交渉力、サプライヤーの交渉力、代替品の脅威の5つに分類をして分析 |
これらの現状分析を通じて、企業がどのような環境下で働いているか、どのような課題に直面しているかを明らかにすることができ、それに対応するための事業戦略の方向性を策定できるようになります。
事業戦略の方向性の策定
3つ目のステップは、事業戦略の方向性の策定です。事業戦略の方向性の策定は、企業が長期的な目標を達成するために実行する具体的な計画や方針を決定するためのプロセスです。
現状分析によって、把握できた自社の強み・弱み・競合他社との差別化するための方法などをもとに、複数の戦略を立てるようにしましょう。いきなり一つに絞るのではなく、複数戦略を立てておくことで、実現性・効果などをもとに最適な戦略を選ぶことができます。
実現可能性の評価(フィジビリティスタディ)
4つ目のステップは、実現可能性の評価(フィジビリティスタディ)です。事業戦略として最も実現可能性の高いものを選ぶのがこのステップの目的です。事業戦略の実現可能性を評価するためには、以下のような観点を考慮することが重要です。
観点 | 補足説明 |
経済的可能性 | 事業戦略を実現するために必要な資金や人材などがあるか、どの程度の経済的なリソースが必要かを調べる |
技術的可能性 | 事業戦略を実現するために必要な技術やインフラがあるか、どの程度の技術的なリソースが必要かを調べる |
法的可能性 | 事業戦略が法的に適切か、法的な制限やリスクがあるかを調べる |
競争環境 | 事業戦略が競争上の優位性を確保できるか、競争相手がどのような動きをするかを調べる |
市場反応 | 事業戦略が顧客や市場から受け入れられるか、市場のニーズやトレンドに適しているかを調べる |
これらの観点を考慮しながら、事業戦略が実現可能かどうかを評価することで、実行する上での問題点を早期に見つけることができ、より効果的な戦略を立てることができます。
具体的な施策を決めて実行する
5つ目のステップは、具体的な施策を決めて実行することです。事業戦略を決めたあとは、具体的な施策に落とし込み実行していくことが必要になります。
戦略はあくまで方向性を定めたものであり、具体的な実行内容を形にしていかねば意味がありません。施策が複数ある場合は、施策の重要度、緊急性、その施策にさけるリソースを考慮しながら、実行する施策の優先順位を決めていくと良いでしょう。
事業戦略の立て方を知るために必要な8つのフレームワーク
ここでは、事業戦略の立て方を知るために必要な8つのフレームワークについて解説します。
- ファイブフォース分析
- 3C分析
- SWOT分析
- STP分析
- PEST分析
- VRIO分析
- PDCA分析
- バリューチェーン分析
それでは、1つずつ解説します。
ファイブフォース分析
1つ目のフレームワークは、ファイブフォース分析です。ファイブフォース分析は、マイケル・ポーターによって提唱された自社の競争状況や新規参入してくる企業に対しての脅威を分析できるフレームワークです。具体的には、市場競争に対して、新規参入者の脅威、競争相手の脅威、バイヤーの交渉力、サプライヤーの交渉力、代替品の脅威などの5つの要素を考慮した分析手法です。
ファイブフォース分析を通じて、企業がどのような環境下で働いているか、どのような課題に直面しているかを明らかにすることができ、それに対応するための意思決定ができるようになります。
3C分析
2つ目のフレームワークは、3C分析です。3C分析は、市場環境や競合環境を分析するためのものです。新しい戦略を立てる時に使用されるよりも、既存の戦略においての改善点を見出すときに使用されることが多いフレームワークです。たとえば、売上減少に陥っている場合は、何が問題点なのかを見つけるために3C分析を活用します。
Company (企業) | 自社の製品やサービス、財務状況、組織構造、戦略などを分析 |
Customer (顧客) | 顧客ニーズ、購買行動などを分析 |
Competitor (競合) | 競合企業の製品やサービス、市場シェア、戦略、財務状況などを分析 |
SWOT分析
3つ目のフレームワークは、SWOT分析です。事業戦略の大枠の決定や事業戦略を具体化するために自社や市場の環境を把握することができるフレームワークです。具体的には下記内容を分析します。
Strengths (強み) | 企業が持っている特徴や長所、競争上の優位性を分析 |
Weaknesses (弱み) | 企業が抱える問題点や短所を分析 |
Opportunities (機会) | 市場や社会情勢の変化などを分析 |
Threats (脅威) | 企業にとってのリスクや脅威を分析 |
自社の強み・弱みを把握し適切な事業戦略の方針を立てることができます。また、ビジネスチャンスがどこにあり、リスクはどのようなところにあるのかを把握することで勝算の高い事業戦略を構築することに役立てることができるでしょう。
STP分析
4つ目のフレームワークは、STP分析です。STP分析は、市場セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つのプロセスを組み合わせた分析方法です。
セグメンテーションは、どの市場が自社の商品を販売するのに適しているのかをいくつかセグメントして把握することです。そして、ターゲティングは、そのセグメントした市場のどの分野に絞るべきかを決めることです。そのうえで、自社の優位なポジションは価格なのか、品質なのかなどを決めて、自社が勝負できるポジションを見つけるのがポジショニングです。
PEST分析
5つ目のフレームワークは、PEST分析です。PEST分析は、企業が市場に参入する前に外部要因を分析することで市場への参入可否判断や戦略策定に役立つ分析です。政治、経済、社会、技術の4つの要素を考慮します。
Political(政治) | 政治環境、法律、規制、税制などが企業に与える影響を分析します。 |
Economic (経済) | 経済環境、景気の動向、通貨の変動、物価の変動などが企業に与える影響を分析します。 |
Sociocultural (社会) | 社会環境、文化、価値観、生活様式、人口動態などが企業に与える影響を分析します。 |
Technological (技術) | 技術革新、情報化、通信技術などが企業に与える影響を分析します。 |
VRIO分析
6つ目のフレームワークは、VRIO分析です。企業の資源や能力がどの程度競争上の優位性を持っているかを分析するためのものです。VRIOは、Value、Rarity、Imitability、Organizationの頭文字を取っています。
Value (価値) | 資源や能力が企業にとってどの程度の価値を生み出すかを分析します。 |
Rarity (希少性) | 資源や能力が他社と比べてどの程度希少であるかを分析します。 |
Imitability(模倣可能性) | 資源や能力がどの程度他社によって真似されにくいかを分析します。 |
Organization(組織化) | 資源や能力がどの程度適切に組織化されているかを分析します。 |
VRIO分析を行うことで、企業が持っている資源や能力がどの程度競争上の優位性を持っているかを把握し、それに基づいた戦略を立てることができます。
PDCA分析
7つ目のフレームワークは、PDCA分析です。PDCA(Plan-Do-Check-Action)は、経営において問題解決や改善のプロセスを管理するためのフレームワークです。
Plan(計画) | 問題を特定し、それに対する解決策を立て、計画を立てます。 |
Do(実行) | 計画を実行します。 |
Check(検証) | 実行結果を測定し、計画通りに実行できているか、改善が必要な点があるかを検証します。 |
Action(改善) | 必要な改善を実施し、継続的に改善を進めます。 |
PDCAは継続的な改善を進めるための方法論であり、実行結果を検証し、それに基づいて改善を実施することで、事業の成功を促進することができます。
バリューチェーン分析
8つ目のフレームワークは、バリューチェーン分析です。バリューチェーン分析は、企業が提供する製品やサービスにおいて、原材料の仕入れから製品やサービスとして提供するまでにどのような活動があり、どのようなコストがかかっているかを分析する手法です。これにより、企業がどのような優位性を持っているかを明らかにし、戦略を立てるべきかを把握することができます。
また、バリューチェーン分析は、主活動と支援活動に分けて考えます。主活動とは、製造、物流、マーケティング、顧客サービスなどを含む、製品やサービスを作り上げるための活動のことをさします。
支援活動とは、人事、財務、管理などを含む、主要活動をサポートするための活動のことです。バリューチェーン分析を行うことで、企業がどこで付加価値を発揮しているのかがわかるため、競合他社との差別化に役立ちます。
まとめ
ここまで、事業戦略の立て方について具体的なステップとフレームワークを中心に解説してきました。事業戦略を立てる際に重要となるのは、現在の外部環境・内部環境を把握し分析することです。
ただし、分析をすることが目的ではなく、あくまで事業戦略を成功に導くことが目的であり、そのための分析になることを忘れてはなりません。
また、事業戦略を策定したから終わりではなく、現場が実行できるように具体的施策にまで落とし込む必要があります。まずは事業戦略の策定までのステップを把握し、主要な分析フレームワークを学ぶところから始めるようにしましょう。