売上分析とは?やり方や代表的なフレームワークも解説
- 売上分析の意味は?
- 売上分析の方法を整理したい
- 売上分析のフレームワークを知りたい
企業経営を成り立たせるために必須の要素は複数存在しますが、その中でも売上は確実に必要な要素の1つです。どの企業でも売上の増減は多かれ少なかれ存在しますが、何かの対策が必要か判断を誤ると、企業経営に影響が出かねません。
そこで必要となるのが売上分析です。売上分析を行うことで、売上に関する現状を的確に把握し、どのような対策が必要になるか明確になってくるでしょう。
この記事では、売上分析の目的や役立つツールの種類、分析ポイントなどを紹介します。
売上分析の目的
売上分析は、売上高を
- 商品
- チャネル
- 月
- 顧客
- 営業所
- 店舗
- 部門
- 担当者
など様々な角度から細分化し、前年同月や競合他社の実績と比較することで、自社や営業担当者の課題を明らかにする経営戦略です。この売上分析により、売上の現状把握や目標設定に役立ちます。また、集客減少の原因を特定すれば売上向上の糸口を見出せるでしょう。ここでは、売上分析の目的を5つ紹介します。
- 商品・顧客の収益性可視化
- 市場ニーズの動向確認
- 販促活動の精度向上
- 適切な予算設定
- 営業担当のモチベーション向上
それでは1つずつ紹介します。
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商品・顧客の収益性可視化
売上分析の目的の1つ目は、商品・顧客の収益性可視化です。
収益性の高い商品・顧客の可視化については、売上分析を通じて自社の強みを明らかにできます。性別や年齢別の売れ行きを把握することで、無駄のない在庫管理と効率的な経営戦略の立案が可能です。これにより、企業は自社の最も価値ある商品や顧客層を正確に理解できるでしょう。
市場ニーズの動向確認
売上分析の目的の2つ目は、市場ニーズの動向確認です。
市場ニーズの動向理解は、マーケティング戦略の根幹です。市場分析で販売すべき商品や注力すべき年齢層が明確になれば、最適な売上方法を見出せるでしょう。優れた製品をリリースすることだけでなく、市場ニーズへの合致も売上アップではポイントとなるため、細やかな分析が重要です。
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販促活動の精度向上
売上分析の目的の3つ目は、販促活動の精度向上です。
売上分析は、販促活動の効果的な実施にも寄与します。ターゲット層に向けた的確な広告展開や認知拡大により、効率的なマーケティング活動が可能です。無駄なコストを減らして収入と支出のバランスを保ちつつ、最適な販促戦略を構築できるでしょう。
適切な予算設定
売上分析の目的の4つ目は、適切な予算設定です。
継続的な売上分析を行えば、適切な予算設定が可能になります。集客数や広告反応を正確に分析すれば、リソースの最適な配分を実現できるでしょう。例えば、Web広告の効果が高ければ広告予算の確保や繁忙期の人材計画、さらには在庫管理に活用できます。データに基づいた戦略的なアプローチを行うことで、予算設定も最適化できるでしょう。
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営業担当のモチベーション向上
売上分析の目的の5つ目は、営業担当のモチベーション向上です。
売上分析は、営業担当のモチベーション向上にもつながります。なぜなら、顧客ニーズに即した適切なマーケティング活動を実行することで、営業担当は自信をもって商品プロモーションができるためです。顧客の購買意欲を高めて売上向上に貢献することで、営業担当自身の評価だけでなく仕事への意欲も高まるでしょう。
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売上分析の方法
ここでは、売上分析の方法を4つ紹介します。
- 目的の明確化
- データ収集
- データ整理・クレンジング
- データ分析・レポート作成
それでは1つずつ紹介します。
目的の明確化
売上分析の方法の1つ目は、目的の明確化です。
目的設定においては、売上分析の最終目標を明確にすることが欠かせません。売上分析を通じて知りたい内容や活用したい意思決定の内容について具体的に定めることで、収集すべきデータや分析手法が明確になります。また、そのことはチーム内で方向性として共有しておきましょう。
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データ収集
売上分析の方法の2つ目は、データ収集です。
データ収集では、設定した目的に応じて、社内外のデータを効果的に集めることが欠かせません。内部データに加えて、市場動向や競合情報などの外部データも活用します。アンケートや調査会社、データ収集ツールなどを利用して、データ管理の環境と体制を整えましょう。
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データ整理・クレンジング
売上分析の方法の3つ目は、データ整理・クレンジングです。
データの整理・クレンジングでは、収集したデータを分析に適した形に加工します。データをテーブルやスプレッドシートに整形し、欠損値や異常値の処理や重複データの削除を行いましょう。このプロセスにより、データの品質と信頼性を高められます。
データ分析・レポート作成
売上分析の方法の4つ目は、データ分析・レポート作成です。
データ分析・レポート作成では、整理されたデータから目的に応じた洞察を引き出します。適切な分析フレームワークを用いて、データの背後にある意味や傾向を読み解きましょう。得られた分析結果は、レポートや報告書の形でわかりやすくまとめて共有することも欠かせません。
売上分析に役立つフレームワーク
ここでは、売上分析のフレームワークを7つ紹介します。
- ABC分析
- RFM分析
- 要素分解
- セグメント分析
- 重回帰分析
- アソシエーション分析
- クロス集計
それでは1つずつ紹介します。
関連記事:BIツールを活用するとどのような分析ができるのか?機能を紹介
ABC分析
売上分析に役立つフレームワークの1つ目は、ABC分析です。
ABC分析は、売上の高い順に商品やサービスをランク付けし、どの商品が利益に貢献しているかを判断する手法です。パレートの法則に基づき、以下のとおり商品のランク付けを行います。
▼ABC分析のランク分け(一例)
A | 累計売上割合が70%以上(売上比率高) |
B | 累計売上割合が11~20%(売上比率中) |
C | 累計売上割合が1~10%(売上比率低) |
売上に占める割合の高い商品から優先的に戦略を立てれば、効率的な売上拡大が可能です。A・B・Cのランクは累計売上割合によって分類されますが、商品別だけでなく営業所や地域などの切り口でも活用できます。
RFM分析
売上分析に役立つフレームワークの2つ目は、RFM分析です。
RFM分析は、
- Recency (直近購入日)
- Frequency(購入頻度)
- Monetary (購入総額)
の3要素に基づき顧客をランク付けし、売上を支える重要な顧客を洗い出す分析手法です。直近の購入がない顧客は離脱リスクがあり、購入頻度が低い顧客はサービスへの満足度に課題がある可能性があります。3つの要素全てが高い顧客であれば、企業にとって最も価値があり優先すべき顧客と判断できます。
要素分解
売上分析に役立つフレームワークの3つ目は、要素分解です。
要素分解は、売上を「顧客単価」・「顧客数」・「購入頻度」など細かい要素に分解し、売上の変動原因を分析する手法です。各要素がどう組み合わさって売上を形成しているか理解することで、売上の増減を引き起こす理由がわかります。顧客ロイヤリティの変化や、今後取るべき施策も見えてくるでしょう。
セグメント分析
売上分析に役立つフレームワークの4つ目は、セグメント分析です。
セグメント分析は、市場や顧客を「年齢」・「性別」・「居住地」などの属性で細分化し、各セグメントを詳細に分析する手法です。地理的・人口動態的・心理的・行動的など複数の変数ごとに分析することで、より深い消費者ニーズを把握できます。これにより、効果的なマーケティング施策の立案や競合他社との差別化が可能です。
重回帰分析
売上分析に役立つフレームワークの5つ目は、重回帰分析です。
重回帰分析は、成果に影響を与える複数の要素が、それぞれどの程度影響しているか数値化する分析手法です。「売上」を目的変数とする場合、「顧客単価」「販売数」などを説明変数として各要素の影響度を算出します。影響度の高い要素にアプローチすれば、効率的に成果を得られて将来の売上などをシミュレーションできるでしょう。
アソシエーション分析
売上分析に役立つフレームワークの6つ目は、アソシエーション分析です。
アソシエーション分析は、商品や顧客に対する関連性を見つけ出す分析手法です。「商品Aと商品Bを一緒に購入する顧客の属性」や「商品Aとよく一緒に購入される商品」などの関連性を導き出します。一見無関係に思える要素から新たな法則を発見できるため、クロスセルマーケティングや商品レコメンドに応用できます。
クロス集計
売上分析に役立つフレームワークの7つ目は、クロス集計です。
クロス集計は、1つの項目に対して2〜3個の要素に着目・分類する分析手法です。アンケート調査などで用いられ、性別や年代などで回答の傾向を把握します。「はい/いいえ」や「あり/なし」での分類が多く、結果がシンプルでわかりやすいためマーケティングリサーチでよく用いられています。
売上分析に役立つツールの種類
ここでは、売上分析に役立つツールの種類を3つ紹介します。
- エクセル
- BIツール
- CRM・SFAツール
それでは1つずつ紹介します。
エクセル
売上分析に役立つツールの種類の1つ目は、エクセルです。
エクセルは多くの人々にとって使い慣れた表計算ソフトで、表計算やグラフ作成が容易であるため簡単に売上分析を実行できます。また、ピボットテーブル機能を活用すれば、地域別売上集計や年齢別人口分布の可視化も可能です。ただ、膨大なデータの処理には不向きであることと、手動でデータ分析する必要がある場面が多いため作業が属人化しやすい点に留意しましょう。
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BIツール
売上分析に役立つツールの種類の2つ目は、BIツールです。
BI(Business Intelligence)ツールは、企業が蓄積する大量のデータから必要な情報を抽出し、売上分析やレポーティングなどを行うツールです。基幹システムと連携して内部情報を自動的に抽出でき、複雑なデータも簡単に分かりやすくグラフ化できます。
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CRM・SFAツール
売上分析に役立つツールの種類の3つ目は、CRM・SFAツールです。
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)とSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)は、いずれも売上分析に役立ちます。SFAは営業プロセスを管理し、CRMは顧客情報の一元管理が可能です。自社の目的に応じ、最適なツールを選択しましょう。
関連記事:CRMツールをわかりやすく解説!MA、SFAの違いから選定のポイントまで総まとめ
売上分析のポイント
ここでは、売上分析のポイントを4つ紹介します。
- 分析結果のパターンを事前想定
- まずは大まかにデータ確認
- 数値の可視化
- 切り口チェックシートの準備
それでは1つずつ紹介します。
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分析結果のパターンを事前想定
売上分析のポイントの1つ目は、分析結果のパターンを事前想定することです。
漫然とデータ分析を行っても、データ分析の結果から適切な考察は困難です。そのため、分析の前に想定される結果のパターンを想定しておくとよいでしょう。その際には、最終的にどのような数値が出たら、どのようなアクションを取るか事前に立案しておきます。そして、分析の流れを言語化してメモに残しておけば、混乱せず目的意識をもって分析を進められるでしょう。
まずは大まかにデータ確認
売上分析のポイントの2つ目は、まずは大まかにデータ確認することです。
データ分析では、まず全体的な大きな数値から確認することがセオリーです。最初から細かい切り口に着目すると、分析するデータ量が多すぎて混乱する上に、本質的ではない部分ばかりに囚われてしまう恐れがあります。そのため、最初はデータの中でも特に重要と思われる1、2種類だけに絞って比較し、データ整理を行っていきましょう。
数値の可視化
売上分析のポイントの3つ目は、数値の可視化です。
数値の比較で知見を得たい場合は、数値の可視化が欠かせません。頭の中だけで数字の大小を想像するのではなく、グラフや表などで数値を可視化することで、データの理解速度が格段に上がります。データビジュアライゼーションは、データを扱う上で欠かせないスキルと言えるでしょう。
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切り口チェックシートの準備
売上分析のポイントの4つ目は、切り口チェックシートの準備です。
分析の切り口が多岐にわたる場合は、チェックシートを用意しておくと迷わず済みます。「確認したい切り口」をリストアップし、分析結果も追記していくことで、作業をスムーズに整理できるでしょう。これにより分析プロセスを可視化することで、より効率的な分析が可能です。
まとめ
この記事では、売上分析の目的や役立つツールの種類、分析ポイントなどを紹介しました。
売上分析は、売上高を様々な角度から細分化して課題を明らかにする経営戦略です。市場ニーズの動向理解や適切な予算設定などが目的で、目的の明確化かたレポート作成までの手順を滞りなく行う必要があります。
ABC分析やクロス集計などのフレームワークが役立ち、エクセルやBIツールなどで実行できるでしょう。また、分析時には分析パターンを事前に想定しておくことや、数値の可視化などを心がけるとよいでしょう。