データドリブンマーケティングとは?重視すべき「指標」と実施に役立つツール成功事例まで解説
- データドリブンマーケティングという言葉をよく聞くが、いまいちわからない
- データドリブンマーケティングを行いたいが、どのようなデータを集めるべきだろう?
- 集めたデータをどのように活用したらよいかわからない
本記事では、データドリブンマーケティングを成功させるための重要な「指標」から、その実施に役立つツール、さらには成功事例までを詳しく解説します。データを武器にしたマーケティング戦略を、一緒に学んでいきましょう。
目次
データドリブンマーケティングとは
データドリブンマーケティングとは、事業の成長を実現するために各種データを集計・解析し、その洞察に基づいてマーケティング活動を行うアプローチです。
従来の経験や勘に頼るマーケティングとは異なり、データに基づいた客観的な判断が可能です。消費者の購買履歴、Webサイトのアクセス状況、ソーシャルメディアでの反応など、さまざまなデータを活用します。
データドリブンマーケティングを行うメリット
データドリブンマーケティングを行うと、下記のようなメリットがあります。
効果測定の精度向上
データドリブンマーケティングによって、効果測定の精度が向上し、さまざまなマーケティング活動に対する投資対効果(ROI)を高度に最適化できます。
マーケティング活動における成果は、従来、人の経験や勘に依存するケースが多かったのですが、データをしっかりと解析することで、どの活動が効果的なのか、どのターゲットにどのようなメッセージが有効なのかといった点が明確になります。
リアルタイムでの課題対応が可能
リアルタイムのデータ収集では、ユーザーの行動や反応を即座に捉え、それを分析することができます。
このようなリアルタイムの情報は、たとえば、特定の広告がどれだけのクリックを生むのか、または新製品がどのように受け入れられているのかといった事項について、タイムラグなく知ることができます。
リアルタイムのデータを活用することで、マーケティング戦略の微調整や、問題が発生した場合の迅速な対応が可能になります。
カスタマーエクスペリエンスの向上
顧客一人ひとりに合わせた製品の推薦やサービス提供ができれば、顧客満足度は高まり、リピート購入や口コミでの拡散が期待できます。
このようなパーソナライズされたアプローチは、データをうまく活用することで実現可能です。
たとえば、以下のようなデータを分析することで、顧客が求めているものを把握し、それに応じたパーソナライズされたサービスや製品を提供することができます。
データ種類 | 収集方法 | 活用例 |
購買履歴 | オンラインショップのログ分析 | レコメンデーションシステム |
ウェブサイト訪問履歴 | Cookieを用いたトラッキング | ターゲティング広告 |
顧客フィードバック | アンケートやレビュー | サービス改善 |
データドリブンマーケティングで知っておくべき「指標」とは
データドリブンマーケティングにおいて重要なのは、効果を正確に測るための「指標」です。指標は、マーケティング活動が顧客に与える影響を理解し、戦略を最適化するために不可欠です。
データドリブンマーケティングで重要な「15の指標」
データドリブンマーケティングを成功に導くには、どの指標に注目すべきかが非常に重要です。
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の非常勤教授、マーク・ジェフリーの「データ・ドリブン・マーケティング 最低限知っておくべき15の指標」に基づいて、以下に各指標を解説します。
指標名 | 説明 |
ブランド認知率 | ブランドや製品がどれだけ認知されているかの指標 |
試乗 | 顧客が製品やサービスを試す回数 |
顧客満足度 | 顧客が製品やサービスに満足しているかの指標 |
解約率 | サービスをやめる顧客の割合 |
オファー応諾率 | 提案やオファーが受け入れられる頻度 |
正味現在価値 | 投資の現在価値と未来価値との差 |
顧客生涯価値 | 一人あたりの顧客が生涯にもたらす利益の総額 |
利益 | 売上からコストを引いた後の金額 |
内部収益率 | 投資プロジェクトの収益性 |
投資回収期間 | 投資した資本が回収されるまでの期間 |
直帰率 | Webサイトを訪れたがすぐに去ってしまうユーザーの割合 |
クリック単価 | オンライン広告のクリック一回あたりのコスト |
トランザクションコンバージョン率 | ウェブサイト訪問者が実際に購入や登録に至る割合 |
口コミ増幅係数 | 顧客が他の人に製品やサービスを勧める割合 |
広告費用対効果 | 広告活動がもたらすリターンと投資した広告費との比率 |
これらの指標をしっかりと把握し、分析することで、効果的なマーケティング戦略を組む土台を作ることができます。
データに振り回されないよう「重要視する指標」を決めておくことが大切
データドリブンマーケティングで一番大切なのは、「指標の選定」です。すべての指標は、等しく重要なわけではありません。
ビジネスの目標や戦略、商品の特性、市場状況によって、重要な指標は変わります。
たとえば、新製品を市場に投入する際は、コストパフォーマンス(CPA)が重要です。しかし既存顧客との関係強化を図る上では、顧客生涯価値(LTV)がキーとなります。
自社の目標と戦略を明確にし、それに合わせた指標を選ぶことで、データに翻弄されずに効率的なマーケティングが可能になります。
最重要指標を決めるには
データドリブンマーケティングを行う上で最も重視する指標は、以下のステップで決めます。
- ビジネス目標の明確化
売上増、顧客満足度向上など、何を目指すかを決めます。
- 関連データ収集
目標に関連する販売、顧客、市場のデータを集めます。
- 指標選定
目標に沿った指標を選びます。たとえば、売上増なら収益成長率、顧客満足度向上ならネットプロモータースコアが適用されます。
指標選定時のポイントは、目標との合致、達成可能性、測定容易性、そしてその指標が具体的なアクションを促せるかどうかです。
これらのステップに従い、目標にマッチした指標を選ぶことで、効果的な意思決定と改善が可能になります。
データドリブンマーケティング実行に役立つツール5選
ここからは、データドリブンマーケティングを行う上で役立つツールを5つご紹介します。
Web解析ツール:ユーザー行動を可視化する
データドリブンマーケティングにおいて、最も重要なのは「現状把握」であり、その基盤となるのがWeb解析ツールです。
Web解析ツールは、Webサイト訪問者の行動—たとえば、どのページを見たか、どれくらいの時間を各ページで過ごしたかなど—を可視化します。
たとえば、訪問者が商品ページをすぐに離れる場合、そのページのデザインやコンテンツに問題がある可能性が高く、すぐに対策を考えることができます。
この情報によって、マーケティング戦略の修正や調整が瞬時にできるようになります。
ビジネスインテリジェンス(BI):データをビジネスインサイトに変える
BIツールは、解析ツールで集めた生データをビジネス上の意味ある情報、いわゆる「インサイト」に変換します。
たとえば、売上データ、顧客行動データ、市場トレンドなど、多様なデータを組み合わせて、新しい市場の機会を発見したり、顧客のニーズにさらに応える商品開発を考える材料を提供します。
BIツールを使うことで、単なる数字やグラフから具体的なアクションプランまで、用途にあった形で導き出すことが可能です。
マーケティングオートメーション(MA):メール配信から顧客フォローまで
BIツールで得られた貴重なインサイトを活かすためには、具体的なマーケティング活動が不可欠です。
マーケティングオートメーションツールは、たとえばメールマーケティングや顧客フォローなど、一連のマーケティングプロセスを自動化し、より効率的に実行します。
期待できるメリットは、ターゲットとなる顧客に対してタイムリーかつ適切なコミュニケーションが可能となる点です。これにより、コンバージョン率の向上や顧客ロイヤリティの強化が期待できます。
カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM):顧客データを一元管理
マーケティングオートメーションで集めた顧客データを効果的に活用する秘訣は、一元管理にあります。
ここで必須なのがCRMツールです。CRMツールを使えば、顧客の基本情報から購買履歴、問い合わせ内容まで、すべてのデータを一箇所で管理できます。
この結果、パーソナライズされたコミュニケーションが実現し、顧客体験も向上します。
顧客データが一元管理されることで、マーケティング、営業、サポートなど、組織全体での顧客理解が深まり、結果的に顧客体験を向上させることができます。CRMは、データドリブンマーケティングを成功させるために不可欠なツールと言えるでしょう。
セールスフォースオートメーション(SFA):営業プロセスを効率化
CRMで一元管理をした顧客データをさらに活用して営業プロセスを効率化する手段が、セールスフォースオートメーションです。
SFAツールは、CRMで整理された顧客データを基に、営業活動をよりスムーズかつ効率的に進めることが可能です。
たとえば、顧客ごとのコンタクト履歴や営業機会、進行中の取引状況などを一目で確認でき、営業担当者が次に何をすべきかを明確に指示できます。
営業チームは顧客に対してより適切なアプローチができ、その結果、売上向上につながります。また、データを基にした営業活動は戦略的な意思決定を可能にし、企業全体の成長を促進します。
データドリブンマーケティングを行い成功した会社の事例
こちらでは、データドリブンマーケティングを行い成功した「京王百貨店」の事例をご紹介します。
京王百貨店は、1964年の東京オリンピックと同時期に開業し、約60年間新宿の発展に貢献してきました。しかし、進化を続けるためには、時代の変化に合わせた戦略が必要です。そこで京王百貨店は、2019年に約40年ぶりに基幹システムを刷新しました。
その際、800種類もの紙帳票をデータ化するプロジェクトも同時に始め、BIツール「Yellowfin」を全社員に導入。これにより、KPIが見える化され、データドリブンな意思決定が一人ひとりのレベルで行えるようになりました。
社員が「Yellowfinで確認して」という言葉を日常的に使うほど、データを活用する文化が浸透。長期的成功のために、データの活用が不可欠なことを示す実例となりました。
関連記事:【DX事例】株式会社京王百貨店
まとめ
データドリブンマーケティングは、企業が市場での成功を収めるために欠かせない戦略の一つですが、重要なのは適切な「指標」の選定と、それを効果的に活用するためのツールです。
指標の選定は、ビジネスの目的や目標に密接に関連しており、業種や市場状況によって変わる可能性があります。
データドリブンマーケティングのプロセスは複雑に見えるかもしれませんが、適切なツールと指標を選べば、効果的な戦略が築けます。
この記事が、データドリブンマーケティングをどのように進めるべきかの理解に役立つ一助となれば幸いです。