【DX事例】株式会社京王百貨店

【DX事例】株式会社京王百貨店

800種もの紙帳票をBIレポートへ。全社員にデータドリブンを根付かせたDX

<概要>

「世界で最も忙しい駅」としてギネス認定されている東京・新宿駅。そんな巨大ターミナル駅に直結という形で旗艦店を構えるのが京王百貨店である。新宿店が開業したのは日本で初めて開催された東京オリンピックと同じ1964年秋。以後、約60年にわたり、新宿の発展に貢献してきた。京王百貨店では、約40年前より使い続けていた基幹システムを2019年に刷新。

それに伴い、およそ800種もあった紙帳票の電子化にも取り組んだ。そのツールとして選択したのが、Yellowfinである。いまやYellowfinは全社員にとって欠かせないツールとして、京王百貨店のデータドリブンな経営・マーケティングを支えている。

基幹システムの刷新を機に、紙の帳票文化からの脱却を検討

「世界で最も忙しい駅」としてギネス認定された世界でも最大級のターミナル駅、東京・新宿駅直上に旗艦店を構えているのが、京王百貨店です。同店舗の使命は新宿に来た誰もが過ごしやすく、日常的に便利に利用してもらえること。京王百貨店の特徴的な取り組みの一つが、「駅弁大会」です。京王百貨店の駅弁大会は50年以上の歴史を持ち、これまで50回以上開催されている同社の長寿催事。規模が日本一と言われるように、会期中は全国から約300種類の駅弁が集合。また駅弁だけではなく、全国各地のうまいものが同会場内で楽しめるのも同イベントの特徴です。

経済産業省が2018年に公開した「DXレポート」(通称「2025年の崖」レポート)をきっかけに、多くの企業がDXに取り組んでいます。京王百貨店もその一社です。同社では2019年に、これまで40年以上使い続けてきたメインフレームを主とした基幹システムを刷新。それに伴い、紙帳票のデジタル化に取り組むこととなりました。ですが、同社で活用されていた帳票の数は約800種にも及んでいました。

「まずは商品管理、販売管理などの情報を管理する基幹システムで出力していた帳票をBIツールで閲覧できるような仕組みを作ることから始めました」こう語るのは、京王百貨店経営企画部システム開発担当課長の杉山博一氏です。基幹システムの刷新をすると共に、全社員約800名が利用するデータ活用基盤として「Keio Department Store Data Lake(KDSDL)」を構築し、BIツールと連携したのです。そのBIツールに選定されたのが、Yellowfinでした。選定理由として、「いくつかのBIツールを検討評価しましたが、YellowfinであればユーザーにITリテラシーの差があっても、誰もが一目見て使えそうなレポートが作成出来そうだと感じました。また、弊社はノーコード・ローコードを志向しており、自分たちだけで内製化してデリバリーできるプラットフォームを採用したいと考えていたので、これらの要件に合致したのがYellowfinだった」と杉山氏は当時を振り返ります。加えて、ユーザーの所属や役職によって閲覧できるレポートのアクセス権を細かく設定できる点も評価されました。

約800種の帳票を集約し、Yellowfinで閲覧可能に

新しい基幹システムが稼働した2019年10月、約400種の帳票を集約した上で、Yellowfinで閲覧できるようにしました。

しかし、これだけで終わりではありません。京王百貨店では2008年に導入した某DWH製品をベースに開発した情報系システムの刷新にも着手したのです。同システムでは日々の営業情報などを、職位・職制ごとに必要なレポートが閲覧でき、優良顧客や売れ筋商品を分析、把握できるような仕掛けとなっていました。もちろん、同システムの帳票も紙で出力されていました。この旧情報系システムの刷新に伴い、定型的な約400種のレポートについても、「約1年かけてYellowfinに移行した」と杉山氏は明かします。

特に、旧情報系サービスの帳票の移行には、かなり頭を悩ませたと、Yellowfinの導入を支援したテクマトリックス株式会社 データソリューション技術課の塩田靖久氏は語ります。なぜなら、Yellowfinは全社員800名が活用するシステムだったからです。「社員の中にはPC操作に慣れている人もいますが、中にはPC操作にアレルギーを感じている人もいるなど、ITリテラシーにはかなり幅があります。こういった方々に専門的な教育を実施しなくても、ぱっと見ただけで使えるシステムに仕上げる必要がありました。ユーザーである社員の皆さんの仕事は数表を読み解くことではありません。いかに情報をわかりやすく伝えるかにこだわる。それが開発側の腕の見せ所で、そこに挑戦していきました」(杉山氏)

開発はアジャイル方式で進めました。社員にプロトタイプを提供した上で意見を聞きながら少しずつブラッシュアップさせていき、現在では、Yellowfinではフィルターで使用する項目などを工夫することによって、従来あった800種以上のレポートが閲覧できるようになっています。そしてこれらのレポートの作成は、すべてシステム担当で行いました。

ユーザーへのリリースにも細かな気遣いがあります。ユーザーに開放する機能はフィルター条件の変更や、必要なタイミングで情報を取得するためのスケジューリング機能など、一部に絞っています。また、全社員がすべてのデータにアクセスできるわけではありません。データのアクセス権は人事システムのマスター情報と紐付けており、職位や職制によって閲覧できる内容が変わります。「人事異動があっても動的にアクセス権が変更・付与されるように仕組化されています」(経営企画部システム開発担当 係長 岡本充央氏)

誰もが容易に見たい情報にアクセスできる仕組み

具体的な使い方としては、WebブラウザからYellowfinにアクセスするだけ。それだけで、前日の売上状況が確認できることはもちろん、部門別、時間帯別の日々の売上が、一目で分かるような形で表示されます。例えば営業担当者や売り場担当者であれば、目標に対して実績がどこまで到達しているかなども簡単に把握するこが可能で。前年度比較も百貨店ならではの見方が容易にできるようになっています。「単日を比較する場合、暦日の前年対比では、曜日がずれてしまいます。購買動向を把握するにあたって、異なる曜日を比較することはあまり意味がありません。そこで単日は同じ曜日、累計は暦日で比較できるようにしています」(岡本氏)

そのほかにも、常備商品とセール商品の売上の内訳構成なども、色分けして簡単に把握できたり、切り替えになった商品の売り上げ分析が容易にできたりします。タブを切り替えれば、“会員化された組織顧客”“一般”というようにお客さまのタイプ別に売上状況を確認することもできます。「一つの画面の中にタブやリンクを貼ることで、経営層や社員が見たいという情報に容易にアクセスできるようデザインしました。ただし、このデザインを実現するために、裏側ではかなりのカスタマイズを行いました。ユーザーのリテラシーの差を埋めるためには、欠かせない取組でした」(杉山氏)

Yellowfin導入によりデータドリブンな思考へと変化

京王百貨店へのYellowfinの導入効果は、紙を中心とした旧態依然のやり方をアップデートし、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組めたことはもちろんですが、KPIの見える化により、社員一人ひとりがデータドリブンな思考に変わりつつあることも挙げられます。「今では社員たちから『Yellowfinで確認して』など、“Yellowfin(イエローフィン)”という単語が日常的に飛び交い、WordやExcelといったオフィスツールと遜色ないほどまでに浸透している」と杉山氏は笑みを浮かべながら話します。

これほどまでに旧来のやり方からの脱却が比較的スムーズに進んだのは、コロナ禍も大きく影響しているといいます。「コロナ禍が私たちの日常生活を大きく変えたように、私たちの会社も変わらなければダメなんだ、という事実を突きつけてくれた」と杉山氏は語ります。

不要不急の外出自粛が求められたコロナ禍は、百貨店をはじめとする小売業に大きなダメージを与えました。新宿駅に拠点を構え、特に訪日外国人が多く訪れていた京王百貨店新宿店では、入国規制により客足も大きく減少しました。「そんな中でいかに売上を上げていくか、相当苦しみました」と杉山氏は語ります。このような状況をデジタルの力で打開し、お客様に寄り添うチャレンジが、2021年にリリースした京王パスポートカード会員向けサービス「Keio BEAUTY LINEミニアプリ」「京王百貨店 新宿店LINEミニアプリ」です。もちろん新しい施策の効果についても、見える化に取り組んでいます。

数字の見える化は、社員一人ひとりのモチベーション向上にもつながっています。「これが見られるのなら、こういうものを見られる様にできないか」と、Yellowfinでの閲覧が定着するにつれ、社員からはYellowfinに対していろいろな要望が届いたそうです。「こういった要望には、実現できるものから応えていきました」と岡本氏は話します。

過去のデータを振り返るだけではなく、未来予測ができるような活用を

今は社員からの要望も少なくなり、開発が落ち着いている状態ですが、課題は残っています。第一に、Yellowfinの結果に人が手加工する情報の集約、「これを実現するには、さらなる知見が必要」と杉山氏。第二に、結果を振り返ることだけに留まらず、未来を志向する活用ができるようになること。そのためには、Yellowfinが提供している新しい機能を使いこなすことも必要になると言います。「シグナルや自動インサイトストーリーなどを使いこなし、未来を予測するような使い方をしたいですね」と杉山氏。もちろん自社だけのデータに加え、天気や気温、交通事情など、サードパーティデータの活用も必要になるでしょう。そのほかにも、「必要なデータをプッシュ型で通知するような仕組みをつくることも今後は必要になるのでは」と杉山氏。先述したように京王百貨店の社員の多くは、バックオフィスで働いているわけではないからです。売り場に常駐しながら必要な情報を取得できるようにする。ウエラブルデバイスやサイネージなどの導入についても、費用対効果が見合えばトライしていきたいと言います。

現在、新宿は大規模再開発が進行しています。2022年10月には京王百貨店と同じく新宿駅西口に拠点を構える小田急百貨店新宿店本館が再開発のため営業終了。京王百貨店新宿店の役割は「渋谷や池袋などに客足が流れないよう、守っていく」という大きな使命が課されています。それだけではありません。京王百貨店周辺も再開発が進められています。新宿を守り、新宿店を訪れたお客さまが、「便利だね」「新宿に来て良かった」と思われるような店作りをする。その実現にはYellowfinをいかにフル活用していくこともカギとなりそうです。

“Yellowfinは数字を直感的に見える化してくれるので、社員がデータドリブンな思考へと変わりつつあります。将来的には未来予測ができるような活用ができれば良いなと考えています”

株式会社京王百貨店

経営企画部システム開発担当

課長

杉山 博一 氏 (写真右)

“Yellowfinの良さの一つは、職位・職制によってアクセス権を細かく設定できること。当社の場合は人事システムの社員マスターと連携させ、人事異動があっても動的にアクセス権が付与されるようにセットしているので、セキュリティ面でも安心して活用できます”

株式会社京王百貨店

経営企画部システム開発担当

係長

岡本 充央 氏 (写真左)

株式会社京王百貨店

本社:東京都渋谷区初台1丁目53番7号 京王初台駅ビル

設立は1961年3月10日。日本で初めてのオリンピックの閉会式から1週間後の1964年11月1日に新宿店(旗艦店)が開店。現在は新宿店のほか、聖蹟桜ヶ丘店、ららぽーと新三郷店、セレオ八王子店、昭島モリタウン店、キラリナ京王吉祥寺店、トリエ京王調布店、サテライト橋本店、ぷらりと京王府中店の9店舗を運営。王冠をかたどったシンボルマークと鳩の包装紙は創業時から使い続けており、同社の「お客さま」「お取引先の皆さま」「一緒に働く従業員」の三者が、「手を取り合い、ともに発展を」という願いが込められている。また駅弁大会の規模が日本一を誇る百貨店としても知られる。

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