外食産業でデータ分析を活かすには?データ分析方法・フロー・必要な視点を解説
外食産業で使えるデータ分析手法を整理したい
外食産業でのデータ分析フローをまとめたい
外食産業ではどのような視点でデータ分析を行えばいいのか
昨今、様々な産業で従業員の長年の経験や勘ではなく、データ分析を用いて客観的かつスピーディーに意思決定を行うことが必要とされてきています。
それは、外食産業も例外ではありません。データ分析で未来予測を行うことで、無駄なく食材などを調達し、効率よく経営していくことが求められているのです。
この記事では、外食産業でデータ分析が必要な理由・使えるデータ分析方法・分析フロー・分析で必要な視点を紹介します。
外食産業でデータ分析が必要な理由
外食産業は、人が生活する上で必須の「衣食住」の一端を担う産業ですが、人口減や新型コロナウイルス感染症拡大対策によって厳しい状況になっています。
また、外食産業で利益を上げるには、主要コストとなる材料費(食材費)、人件費、地代家賃の総額を抑制することが重要なポイントになります。特に、以下の式で示すFL比率が60%を超えると、改善策が必要とされています。
FL比率={(F(フード:材料費))+(L(レイバー:人件費))}÷売上
しかし、材料費を削減しても、それに伴い品質を大きく落としては売上に影響が出ることは容易に想像できます。そこで、データ分析で経営を効率化することで、収益性と品質を両立させることが必要なのです。
外食産業で使えるデータ分析方法
ここでは、外食産業で使えるデータ分析方法を紹介します。
- ABC分析
- RFM分析
- 販売分析
- クロスセル分析
- エリア分析
それでは1つずつ紹介します。
ABC分析
外食産業で使えるデータ分析方法の1つ目は、ABC分析です。
複数の指標から重視するものを選択し、優先順位をつけて管理する手法のことで、パレート分析とも言います。
具体的には、商品の売上や店舗運営コストなどの指標から重要視するポイントを決めて、優先順位の高い順にA・B・Cのランク付けを行います。
最も重要度が高いとされるAランクの商品は、人気が高いため売り切れが起きないようにすると良いでしょう。反対に、Cランクの商品は人気がないため販売中止などの施策を検討する必要があるかもしれません。
商品のラインナップを再検討したい時などに有効な手法です。
RFM分析
外食産業で使えるデータ分析方法の2つ目は、RFM分析です。
Recency(直近)、Frequency(頻度)、Monetary(購入金額)の3つの指標の頭文字を取っています。それらの指標をグループ化して各グループの性質を知ることで、それぞれにあった施策を行うためのモデルです。
RFMのそれぞれの指標において、優先度を基に重み付けをして、その合計点から顧客のランク付けを行います。優良顧客、リピーター、離反顧客を可視化できるので、より効率的に施策を行えます。
販売分析
外食産業で使えるデータ分析方法の3つ目は、販売分析です。
商品の販売実績データを分析するもので、商品ごと、店舗ごと、顧客ごとなど、様々な切り口から販売数量や販売金額のデータを分析します。
これにより、店舗ごとの客層の違いなどがわかり、どの店舗が好調か、どの客層に対する施策を強化すべきかを分析できます。
関連記事:POSデータの分析が企業の競争力に!重要性・分析の種類・活用方法について解説!
クロスセル分析
外食産業で使えるデータ分析方法の4つ目は、クロスセル分析です。
販売記録から、ある商品と組み合わせで購入(クロスセル)されることが多い商品を分析するものです。商品の陳列やセットメニューの提案に活用されます。
一例を挙げると、ハンバーガーショップにはハンバーガーだけでなくポテトやドリンクのセットメニューも販売している店舗が多数存在します。これは、ハンバーガーよりも利益率の高いポテトやドリンクをセットにして販売することで、より多くの収益を狙ったものです。
エリア分析
外食産業で使えるデータ分析方法の5つ目は、エリア分析です。
エリアの店舗それぞれを地図上に示して状況を分析することで、エリアごとの景気を分析するものです。商圏分析とも言います。
店舗が多く存在し、地域も散らばっている会社にとっては特に重要な分析手法になります。また、どのエリアの店舗で重点的に対策を行う必要があるか分析する、もしくは食材の配送ルートの立案を行うなど、エリア分析を活用できる場面は多数存在します。
外食産業のデータ分析フロー
ここでは、外食産業のデータ分析フローを紹介します。
- 目標を明確に設定する
- 仮説立て
- データ分析方法を決定する
- データを収集する
- 収集したデータを分析する
それでは1つずつ紹介します。
目標を明確に設定する
外食産業のデータ分析フローの1つ目は、目標を明確に設定することです。
データ分析は、あくまでもビジネスにおける目標達成のために行うものです。それには、現状とその課題を十分に把握して、データ分析を行う目的を明確にしなければなりません。データ分析自体を目的にしてはいけません。
データ分析を行う目的を明確にすることで、データ分析の目標やゴールが明確となり、適切なデータを集めて適切な手法で分析を行えるようになります。また、以降のステップでも作業を効率的に進められます。
仮説立て
外食産業のデータ分析フローの2つ目は、仮説立てです。
自社の現状とその課題を十分に把握できていれば、例えば「冬季にはこの商品の売上が伸びる」など、何かしらの仮説を立てられることでしょう。データ分析の目的は、その仮説が本当に成り立つか検証することです。
仮説と目標両方あってこそデータ分析が成り立ちます。1つの仮説が成り立たなければ、現状や課題を見直して別の仮説を立ててみましょう。
データ分析方法を決定する
外食産業のデータ分析フローの3つ目は、データ分析方法を決定することです。
取るべきデータ分析手法は、達成したい目標や立てた仮説、リソースやすでに収集しているデータの種類によって変わってきます。また、また、必要なデータの種類もデータ分析手法によって変わってきます。
それらの要素を考慮した上で、今回のデータ分析で最適な手法を選びましょう。必要なデータがそろわず、現実的に手法を選ぶことが難しいこともありますが、収集できるデータの中で分析できないか検討しましょう。
データを収集する
外食産業のデータ分析フローの4つ目は、データを収集することです。
データ分析を行うには、一定以上のサンプル数(データ量)を集めなければなりません。普段の業務もありますが、日頃からどのデータが必要か整理して、その上で必要なデータの収集と整理を行なっていくと良いでしょう。
また、必要なデータを収集している時には、そのデータを活用してデータ分析を行いましょう。
収集したデータを分析する
外食産業のデータ分析フローの5つ目は、収集したデータを分析することです。
データ分析を行う前段で、収集したデータを分析しやすいよう整理しておきましょう。こうすることで、データ収集のミスや取りこぼしがあった時には、データ分析前に気づくことができます。これにより、手戻りを防止できます。
データ分析がうまくいかければ、仮説やデータ分析手法の再検討を行いましょう。また、その後のことを考えて、データ分析がどれほど目標達成に役立ったか評価を行うと良いでしょう。
外食産業のデータ分析で必要な視点
ここでは、外食産業のデータ分析で必要な視点を紹介します。
- 顧客視点
- 商品視点
- 店舗視点
それでは1つずつ紹介します。
顧客視点
外食産業のデータ分析で必要な視点の1つ目は、顧客視点です。
売上は顧客からの評価と言えます。そのため、売上を可視化して定量的に評価することで、今後どの層の客を増やしたいか分析する必要があります。
分析を行う時には、性別や年齢、購入状況、もしくは新規顧客かリピーターかなど、様々な切り口から分析しましょう。そうすることで、今後どの層に向けた施策を重点的に行うべきかわかってくるはずです。
商品視点
外食産業のデータ分析で必要な視点の2つ目は、商品視点です。
商品の売れ方を分析することで、現状の課題を洗い出します。商品視点での分析を行うことで、売上や粗利率など利益を上げるために必要な課題が出てきます。
これらの課題を活かして、商品開発や商品リニューアル、売り場作りなどを行うことで、日々の業務の効率性、生産性の向上が期待できます。
店舗視点
外食産業のデータ分析で必要な視点の3つ目は、店舗視点です。
複数店舗を経営している時は、店舗ごとの違いを把握することも重要なデータ分析ポイントです。店舗ごとに、収益や売上の差が生じている要因を分析します。また、収益の高い店舗と低い店舗の違いを可視化することで、何らかの傾向がないか分析します。売上については、立地条件だけでなく顧客構成や接客の違いを分析します。
そして、それらの分析結果を基に、今後の出店戦略や店舗オペレーションにも活かせるルールを構築していくことで、会社全体の収益アップを期待できます。
まとめ
この記事では、外食産業でデータ分析が必要な理由・使えるデータ分析方法・分析フロー・分析で必要な視点を紹介しました。
外食産業で収益を上げるために考慮しなければならない要素は、メニューの品質や種類だけでなく、店舗の立地や材料の調達、従業員の接客など多岐に渡ります。
ただ、これまでは数ある課題のうち何が特に優先順位が高いか、課題に対してどのような打ち手を実行すべきかは、経験豊富な従業員による属人的な判断に左右されることも少なくありませんでした。
しかし、外食産業においてもデータ分析を行うことで、根拠をもって正確に経営判断を行えるようになり、より効率的な経営を行えるようになることでしょう。