デジタルトランスフォーメーションにおける課題とは?建設業・自治体の問題や解決策も解説
- デジタルトランスフォーメーション推進における課題は何か
- 推進を阻む課題をどう解消すればいいのか
- デジタルトランスフォーメーションを進める意欲はあるが、どう進めたらよいかわからない
デジタルトランスフォーメーションの波が全業界に押し寄せ、自治体や建設業もその影響を受けています。しかし、日本においては、IT人材の不足を始めとした多くの課題があり、デジタルトランスフォーメーション推進を妨げています。
この記事では、これらの課題と解決策について、詳しく解説していきます。
目次
日本のデジタルトランスフォーメーション推進の現状
日本のデジタルトランスフォーメーションは進行中ですが、まだ多くの課題があります。IPAの2022年版「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」によれば、約半数の企業はデジタルトランスフォーメーシの全社戦略が未確立で、初期段階にあるとされています。
また総務省の「情報通信白書」によると、約6割の企業がデジタルトランスフォーメーシを「今後も予定なし」と回答しています。規模別に見ると、大企業では約4割、中小企業では約7割と、意識の差は歴然としています。特に中小企業でその傾向が強く、大企業との意識差が顕著です。
日本のデジタルトランスフォーメーション推進はまだ始まったばかりであり、今後の取り組みが急がれている状況です。
参考:
DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2022年版)|独立行政法人情報処理推進機構
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/bunseki2022.html?utm_source=dxsquare
令和3年版 情報通信白書|総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112420.html
インフラ分野・建設業界でもデジタルトランスフォーメーションが課題に
インフラ分野においても、デジタルトランスフォーメーションは避けて通れない課題となっています。以下に、その主な問題点をいくつか列挙します。
国内の建設業・インフラにおけるデジタルトランスフォーメーション課題
建設業界とインフラ分野におけるデジタルトランスフォーメーションの主な問題点を以下に列挙します。
- 建設業界は労働集約型であり、生産性が低い
- 高齢化が進む一方で、新しい人材の業界参入が減少。ITスキルを持つ人材の不足が続いている
- 多くの企業が古いシステムを使い続けており、更新や整合性に課題がある
各企業や関連機関が一丸となって取り組まなければ、課題解決は難しいのが実状です。
国土交通省によるデジタルトランスフォーメーションの取り組み
国土交通省は建設業界の課題解決に狙いを定め、主に二つのプログラムを推進中です。
i-Construction
- 5G、AI、ドローン、レーザー測量などの最新技術を活用して効率と安全性を向上させることを目指しています。
- 3Dデータ共有手法のBIM/CIMを活用し、設計から施工までをスムーズに進めることを目指します。
建設業働き方改革加速化プログラム
- 「長時間労働の是正」「給与・社会保険」「生産性向上」という3つのカテゴリーで、働き方改革の取り組みを強化するための新しい施策を打ち出しています。
- ICT施工や資材の効率化、人材育成にも力を入れています。
これらの施策は、業界のデジタルトランスフォーメーションを確実に進展させるものですが、スピードや効果は、各企業がどれだけ積極的に参加するかによって左右されます。
自治体におけるデジタルトランスフォーメーション課題
企業に比べ、自治体のデジタルトランスフォーメーション進行状況はまだ遅れています。デジタルトランスフォーメーション研究所の調査によれば、全国の自治体の約8割が、デジタルトランスフォーメーションの取り組みが不十分であると認識しています。
たとえば、役所で電子申請システムを導入している場合でも、申請データを職員が手作業で再入力するケースが少なくありません。デジタル技術は導入されていますが、その後のフローが不明確で、単なるIT化に留まっている状態です。
紙ベースの業務文化が続いている自治体では、一人当たりの業務量が多く、効率が低下しています。
このままでは、重要な地域政策に手が回らず、自治体そのものの活気が失われる懸念もあります。
参考:レポート | デジタルトランスフォーメーション研究所
デジタルトランスフォーメーションの実現を阻む主な課題
デジタルトランスフォーメーションの実現には、多くの課題が存在します。以下に、デジタルトランスフォーメーションを阻む主な課題要因を紹介します。
経営層によるDX方針・ビジョンの不足
デジタルトランスフォーメーションの進展が求められる中で、多くの企業がまだ戸惑いを感じている一因に、「経営層によるDX方針・ビジョンの不足」があります。
一般社団法人日本能率協会(JMA)による企業経営者向け調査「日本企業の経営課題2022」を見ても、67.8%の回答者が「DXに対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」と回答しました。
デジタルトランスフォーメーションは単なるテクノロジーの導入ではなく、それを活用して何を解決し、どのような新たな価値を生むのかというビジョンが不可欠です。それが確立されていなければ、具体的な事業展開すら難しくなるのは自然の成り行きと言えるでしょう。
DX人材の不足とスキル育成の問題
デジタルトランスフォーメーションにすでに取り組んでいる企業でも、人材不足が深刻な問題とされています。「日本企業の経営課題2022」によれば、「DX推進に関わる人材が不足している(採用)」とした回答は、「おおいに課題である」「課題である」「やや課題である」を合計して、85.9%にも達しています。
企業が今後デジタルトランスフォーメーションを進めていくためには、この人材問題にどう対処していくかが、成功の鍵を握るでしょう。
システムの老朽化・ブラックボックス化
多くの企業や自治体が古いレガシーシステムに頼っており、効率と柔軟性を損なっています。クラウドやAIとの連携が難しく、システムがブラックボックス化するケースも多いです。特に、システムを設計または運用していた人材が不在になると、問題対応が一層厳しくなります。
このような課題に取り組むためには、単なるシステムの見直しではなく、人材育成も含めた包括的な戦略が求められます。新しいテクノロジーへの適応能力と、既存システムの正確な理解が両立する人材を育てなければ、スムーズにデジタルトランスフォーメーションを実現することは難しいでしょう。
参考:「日本企業の経営課題2022」一般社団法人日本能率協会(JMA)
https://www.jma.or.jp/img/pdf-report/keieikadai_2022_report.pdf
デジタルトランスフォーメーション推進に向けた課題解決策
デジタルトランスフォーメーションを成功に導くためには、以下のようなポイントを考慮することが重要です。
経営層のDXへの深いコミットメントは必須
デジタルトランスフォーメーションの成功には、経営層の深いコミットメントが不可欠です。多くの企業が「ビジョンや経営戦略が不明瞭」と感じるのは、経営層が明確な方向性を示していないためです。
成功への道筋としては、まず経営層がデジタルトランスフォーメーションのビジョンを明示することが基本です。次に、このビジョンに沿って具体的な経営戦略やロードマップを描く必要があります。何を目的とし、どのような手段で、いつまでに達成するか、という具体的な計画が求められます。最後に、経営層がリーダーシップを発揮してデジタルトランスフォーメーションを積極的に推進すれば、成功の確率は高まります。総じて、経営層の積極的な関与が成功の鍵と言えるでしょう。
DX文化の醸成とDX人材確保
デジタルトランスフォーメーションを成功させるには、単にテクノロジーを導入するだけでなく、企業文化の変革が求められます。
新しい社員をデジタルスキルを条件に採用すると、即戦力になります。また、既存の社員にデジタルスキルを教育すると、企業文化やビジネスの核心を理解した上で、新しい技術を活用できます。
DX文化の醸成は、これらの人材確保と密接に関連しています。デジタルに対する理解と意識を高め、組織全体でデジタルトランスフォーメーションを推進する文化を作り上げることが、最終的な成功に繋がります。
情報資産・ITシステムの見直し・アップデート
デジタルトランスフォーメーション推進においては、旧式システムやデータの不整合が大きな障壁となることが多いです。解決策として、以下のステップが有効です。
- 情報資産の整理
まず、現有のデータベースや文書、画像等の情報資産を分析し、価値と使用状況を評価します。
- システム刷新
ITシステムの全体構造を見直します。これには、クラウド化やセキュリティ強化が必須です。
- 持続的メンテナンス
新システムが動き出した後も、継続的なメンテナンスと更新が必要です。これにより、システムを常に最新の状態に保てます。
これらのステップを慎重に実施することで、課題を解決する道が開かれるはずです。
デジタルトランスフォーメーション推進の課題を解決するツール・サービス
デジタルトランスフォーメーションには多くの課題が伴いますが、それらを解決するためには、適切なツールやサービスの導入が不可欠です。特に注目すべきツール・サービスに焦点を当て、以下よりご紹介します。
クラウドサービス
クラウドサービスは、データをリモートサーバーに保存し、インターネット経由でアクセスできるようにするサービスです。
クラウドサービスのメリットには、主に以下のようなものがあります。
- 物理サーバーの設置・維持費が不要
- 需要に応じて容易にスケール調整できる
- インターネットがあればどこからでもデータにアクセスが可能
クラウドサービスの導入は、デジタルトランスフォーメーションを推進する上での重要なステップとなるでしょう。ただし、セキュリティ面での対策も必須ですので、信頼性の高いサービスプロバイダを選ぶことが重要です。
AI(人工知能)
AIは人間の行動や思考を代替する技術であり、データ分析やデータ活用など、デジタルトランスフォーメーシにおける重要な役割を果たします。
AIの一例として、ChatGPTなどのテキスト生成AIやAIチャットボットがあります。これらは、顧客対応や内部業務における問い合わせ対応、さらにはデータ解析などに使用されます。
AIは以下のような方法でデジタルトランスフォーメーシを支えます。
- AIの導入により、高速な顧客対応や業務処理が可能
- データを基にした高度な分析と業務処理を実現
- 人の介入が不要な時間帯でも、AIがサービスの提供を継続
AIがより広く一般的になっている現在、AIの導入は、デジタルトランスフォーメーシを成功させるために欠かせない要素となっていると言えるでしょう。
データ分析ツール
データ分析ツールは、大量のデータから有益な情報を抽出し、ビジネス上の意思決定を支援する役割を果たします。
具体的には、下記のような特長があります。
- 未来予測の精度向上
- 大量データを効率的に処理
- 自動分析とデータの可視化
データ分析ツールの一例として、弊社の提供する「Yellowfin」が挙げられます。Yellowfinには、次のような特長があります。
- ノーコード・ローコードの開発環境を使用した組み込み運用ワークフロー
- データの変化や外れ値を発生と同時に発見
- 技術があまり無くても、レポート作成が可能
YellowfinなどのBIツール導入により、企業や自治体は、迅速かつ高品質な意思決定が可能になるでしょう。
まとめ
デジタルトランスフォーメーション推進には、経営ビジョンの不明確さや人材不足、古いシステムといった多くの障壁が立ちはだかることが多いです。
このような課題に対処するためには、各種ツールやサービスの導入が不可欠です。特にデータ分析ツールは、質の高い意思決定を迅速に行う上で極めて有用です。
特にYellowfinのような高機能なBIツールが、多くの課題を乗り越える鍵となるでしょう。