ビジネスインテリジェンス (BI) ソリューションのスペクトラムを理解する
ビジネスインテリジェンス (BI) およびアナリティクスソリューションは、非技術系ビジネスユーザーおよび専門家の両方がより良い意思決定を行い、ビジネスパフォーマンスを向上させる力となります。そして、その重要性はここ数年の業界の大きな成長によって示されています。
様々な情報によると、BI市場が今後5年間で400億ドルを超えると見積もられています。Fortune Business Insightsによると、世界のBI市場は2021年の240億5000万ドルから、2028年には430億3000万ドルに成長し、予測期間におけるCAGR (年平均成長率: Compound Annual Growth Rate) は8.7%になると予測されています。
この急速な成長は、BIおよびアナリティクス市場に様々なソリューションやツールを生み出しています。TableauとPowerBIはそのユビキタスな例ですが、他にも数多くのソリューションがあることで、この分野を理解し、適切な選択をするのは非常に困難となっています。
本ブログでは、現在提供されているBIおよびアナリティクスソリューションのスペクトラムを詳しく紹介することで、各ツールの特定のデータニーズへの対応が他製品と比較してどのように優れているのかを理解することがなぜ重要なのかを把握するのに役立ちます。
データ課題を適切なアナリティクスソリューションに合わせる
BIおよびアナリティクスツールのスペクトラムを分類する方法のひとつとして、それらが解決する問題を理解することがあります。ビジネスおよびBIの課題には、それぞれに特徴があります。
- 品質に関するデータの状態、および分析的アナリティクスのためにデータがどの程度構造化されているか (またはされていないのか)
- インサイトを特定する作業を行うユーザーのデータリテラシーやスキルレベル
- インサイトを使用するユーザーのデータリテラシーやスキルレベル
- インサイトが反復可能および予測可能である度合い、または各インサイトディスカバリーが独自のものであるかどうか
そのため、特定のビジネスニーズに合わせて適切なソリューションを選択するように注意しなくてはいけません。
BIスペクトラムの左側は、構造化されておらず予測可能性も低い課題を表しており、ユーザーのスキルレベルはより洗練され、専門家されています。
例:
- ある企業では、どの顧客が解約する傾向が高いかを把握したがっていますが、解約を予測する特性が分かりません。ウェブサイトからのクリックストリームのような生のデータセットだけでなく、顧客関係管理 (CRM) システムから顧客購読データも取得されています。ただし、データは未加工の形式であり、アナリティクスをサポートするように構造化されていません。例えば、ディメンション (次元) は標準化や非正規化がされておらず、メトリック (数値) は事前に計算されておらず、データは高速クエリーパフォーマンスのために要約されておりません。この種のソリューションでは、必要なインサイトを抽出するために専門的なツールやスキルが必要になります。
BIスペクトラムの右側は、より構造化された、予測可能で反復可能な課題を表しており、ユーザーの (データ) スキルレベルは低いが、ビジネス知識は高いです。
例:
- ある小売業の購買責任者は、在庫管理システムから低在庫レベルの通知を受け取りました。責任者は、在庫切れを避けるために発注を行いたいと考えています。在庫管理システムにはアナリティクスが組み込まれており、過去の発注量、季節割引パターン、返品レベルなど、その製品を供給する各ベンダーの比較分析を含む、最適な発注を行うのに役立つインサイトを責任者に提供します。責任者は特別なデータリテラシースキルを持ち合わせている訳ではありませんが、既存のアプリケーションおよびワークフロー内の文脈に適切なアナリティクスが提供されます。
それでは、自社のニーズに適したアナリティクスソリューションを見つけるには、どのようにすればよいのでしょうか。
以下では、特定のアナリティクスソリューションが特定の課題領域に基づいてBIスペクトラムのどこに分類されるのかを例示することで、(各ソリューションに関連するいくつかのハイレベルな長所と短所も併せて) 独自のビジネス/データ課題を適切なタイプのツールに適合させる支援をします。
1. 文脈的BI
文脈的アナリティクスとも呼ばれる文脈的BIは、データアクセスおよび分析を既存のアプリケーションのコアワークフローと同義とすることを意図して、アナリティクスをより直接的にアプリケーションに配置する組み込みアナリティクスモデルの進化です。
これにより、基幹業務ユーザーは (既存のアプリケーションのUIやトランザクションフロー内で) アプリケーションを使用した日常業務にデータが提供されるため、効率の最適化、数字の背後にある文脈の提供、日々の意思決定の指針とすることができます。この増大するビジネスニーズに対応できる商用のBIツールは、現時点で非常に少数です。
特徴
- アナリティクスおよびパフォーマンスのために最適化された高度に構造化されたデータベース (データマート)
- 大部分が既知で反復可能なユースケースのデータニーズ
- 最適な効率性と文脈を実現するためにワークフローに組み込まれたレポートおよびダッシュボードによる構造化された配信
- 企業全体に共有されるインサイト
- 一般的にデータリテラシーの低い中小企業のハイビジネスで求められる/使用されることが多い
文脈的BI向け商用BIツールの例
Yellowfin BI – 組み込みBIに焦点を当てたBIソフトウェアのパイオニアであり、現在はアメリカテキサス州のオースティンに本社を置くYellowfinの組み込みBI機能は、あらゆるタイプのユーザー (非技術者または専門家) のデータを民主化し、数字の背後にあるより深い文脈を提供することで、ビジネス上の意思決定を改善することに注力しています。これは、独自の文脈的アナリティクスにより実現されています。
ThougtSpot – 2012年に設立した野心的なベンダーであり、大規模な技術投資を行ったセルフサービスアナリティクスに焦点を当てた革新的な技術を提供しています。
Looker – 2019年にGoogleに買収されたLookerは、開発者向けの組み込みツールであり、現在はGoogle Cloudの技術スタックと連携しています。Lookerはデータ設計や管理に独自のスクリプト言語であるLookerMLを使用しています。これは、Google BigQueryとの親和性が高いです。
Sisense – イスラエルで設立された非上場企業で、独自のアーキテクチャーを使用してBIを管理し、最近ではSaaSホスト型の組み込みアナリティクスに焦点を当てた幅広いサービスを提供しています。
Yellowfin 文脈的アナリティクスダッシュボードの例
2. カスタムBIアプリケーション
特定のビジネスユースケース向けにカスタマイズされたビジネスインテリジェンスアプリケーションのニーズは年々急速に高まっており、商用ソリューションの数は少ないながらも突出しています。
特徴
- 特定のユースケースに向けて最適化された高度に構造化されたデータベース
- 狭く、明確に定義されたユースケース (例: ビジネスプロセスの計測と遠隔測定)
- 多くの場合、ビジネスプロセスワークフローに組み込まれている単一のビジュアライゼーションによる高度にターゲットを絞った配信
- ワークフロープロセス中に使用されるインサイト
- 一般的にデータリテラシーの低い中小企業のハイビジネスで求められる/使用されることが多い
カスタムBIアプリケーション向け商用BIツールの例
FusionCharts – 世界中の何千もの企業で使用されているJavaScript (JS) アプリケーションの組み込みグラフに特化したエンタープライズダッシュボードへの初期参入企業のひとつです。
HighCharts – ノルウェーを拠点とするFusionChartsの代替製品で、商用グラフコンポーネントの強力なライブラリを提供しています。
カスタムBIアプリケーションに組み込まれたFusionCharts グラフの例
3. データディスカバリー
データディスカバリーとは、関連するソースからデータを収集し、それを探索することでインサイトを特定する機能のことです。これは、ビジュアルベースのツールや高度なアナリティクス機能を使用することで実現され、様々な商用BIツール/オプションを利用できます。
特徴
- データビジュアライゼーションを含む標準的なBI手法がデータディスカバリーを促進
- より構造化されたデータ (データウェアハウス) または一般的には個人用のデータセット (xls, csv)
- インサイトディスカバリーのために広く定義された領域
- コラボレーションツールやデータ共有により部門間で共有されるインサイト
- 一般的に経験豊富なデータアナリスト/中小企業ビジネスにより求められる/使用されることが多い
データディスカバリー向け商用BIツールの例
Tableau – 当初は分散型アナリティクスに重点を置いたExcelの代替でしたが、今日のTableauは、特にSalesforceによる買収後、ハイエンドのエンタープライズツールとなっています。
Power BI – Microsoftは、同社の商標であるフリーミアム採用モデルを使用して、このツールをTableauに代わる最も人気のあるツールのひとつとして確立することに成功しました。現在ではあらゆる場面で使用されており、Tableauと同様に、より洗練された高コストの製品を提供するエンタープライズルートを進んでいます。
Qlik – 業界内の独立系企業であるQlikは、総合的なアナリティクスエンジン、洗練されたAI、クラウドプラットフォームを提供しています。
Domo – 最初で唯一のクラウドベースのSaaSツールのひとつであるDomoは、そのシンプルさと魅力的なビジュアライゼーションで人気を博しました。他のツールが最新化するにつれて、Domoは明確な差別化要因を定義するのに苦労していますが、データディスカバリーBIツールの検索では未だに存在感を維持しています。
4. 調査と探索
調査や探索とは、技術的知識を持つアナリストや専門家によるビジネスデータ (通常は生の非構造化データ) のより技術的な分析を指します。これは、SQLやR言語の知識を持つ人々を対象とした、古くからある多くの商用ソリューションによりサポートされています。
特徴
- 生の非構造化データ (データレイク)
- 定義が不明確または単発の質問
- インサイト抽出に必要な専門的なアルゴリズム
- カスタムレポートにより共有されるインサイト
- 一般的に専門的なスキルセット (データサイエンス、データエンジニア) に求められる/使用されることが多い
調査や探索向け商用BIツールの例
SAS – 1970年に設立された定評のあるツールであるSASは、基幹業務ユーザーではなくプロのアナリストにより使用されており、業界ではよりプレミアムなソリューションのひとつと見なされています。
R/RStudio – SASに代わる開発者向けであり、現在はPositと呼ばれるRStudioとして商用パッケージ化されたR言語のオープンソースモデルにより広く採用されています。
まとめ
BIおよびアナリティクスソリューションのスペクトラムをガイドなしに理解するのは難しいかもしれません。そのため本ブログが、現時点で最も顕著な課題領域とビジネス要件に応じて、市場の現在のBIツールスペクトラムがどのように適合するかについて有益な概要を提供できていることを願っています。Yellowfinが個別のユースケースのニーズにどのように適合するかの詳細については、弊社担当までお問い合わせください。
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