業務プロセス改善とは?基礎的な概要・目的・手順・フレームワーク・ツールなど全て網羅して解説します!
業務プロセス改善について知りたい
業務プロセス改善の目的について知りたい
業務プロセス改善の手順・フレームワーク・注意点について知りたい
企業や組織として中長期的に事業を継続していくためには、常に業務プロセス改善をしながら、企業を良くする取り組みに向き合っていく必要があります。
しかし、業務プロセス改善と言えども、どこから着手すべきかわからなかったり、課題が多いため、何を基準に優先順位をつけるべきかわからない人もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は業務プロセス改善についての基礎的な概要の他、業務プロセス改善を行うための手順・フレームワーク・注意点について具体的に解説していきます。
目次
業務プロセス改善にまつわる基礎知識
ここでは、業務プロセス改善にまつわる基礎知識について解説します。
- 業務プロセスとは
- 業務プロセス改善とは
- DXや働き方改革との関連性
それでは、1つずつ解説します。
業務プロセスとは
1つ目の基礎知識は、業務プロセスについてです。業務プロセスは、企業や組織が目的を達成するために一定の作業手順・ルールをもとに行われる業務の流れのことを意味します。簡単に言えば、日常で行われる業務の流れが業務プロセスと言えます。商品・サービスを提供し利益を獲得するまでの流れで、総務・経理などの企業の基盤を支える部署もあるからこそ、企業の仕事は成り立ちます。企業における業務プロセスとは、各組織の仕事の連なりとも言えるでしょう。
業務プロセス改善とは
2つ目の基礎知識は、業務プロセス改善についてです。業務プロセス改善は、業務の流れを整理して業務の効率化・コストダウンなどを達成することです。たとえば、特定の社員に仕事が集中してしまっている構図になっている場合、その社員が稼働できなくなってしまった場合に業務が遅滞してしまいトラブルが起きる原因になる可能性があります。これを避けるためには、業務プロセスを再編成して、業務が均一にいきわたるような体制や業務の流れにする必要があります。
いわゆる「ムリ」「ムダ」「ムラ」を無くすことで、限りあるリソースを効率的に活用し、生産性を向上させることが業務プロセス改善と言えます。
DXや働き方改革との関連性
3つ目の基礎知識は、DXや働き方改革との関連性についてです。業務プロセス改善は、DXと働き方改革とは密接な関係があります。働き方改革は、ワークライフバランスを実現するための業務改革であり、従業員のワークスタイルに力点を置いているのに対して、業務プロセス改善は、業務の効率化や生産性の向上を目的として業務の「ムリ」「ムダ」「ムラ」を無くす業務の成果に軸を置いています。また、DXは、業務プロセス改善の手段・改善策の一種で、IT技術を活用して業務の効率化を促進します。
業務プロセス改善と似ている言葉
ここでは、業務プロセス改善と似ている言葉について解説します。
- 業務フロー
- BPR
それでは、1つずつ解説します。
業務フロー
業務プロセス改善と似ている言葉の1つ目は、業務フローです。業務フローは、フローチャートなどの図を使用して業務の流れを表したものです。業務フローは、業務プロセス改善を考えるときに、どの業務を改善するのか検討をつけるために活用されたりするもので、業務プロセス改善とは異なります。
BPR
業務プロセス改善と似ている言葉の2つ目は、BPRです。BPRは、Business Process Re-engineeringの頭文字をとった言葉で、現在の社内の業務内容や業務フローを根本的に見直し抜本的に変えていくことです。一方で、業務プロセス改善は、仕事をしやすくするための業務の効率化を目的としており、部分的に改善していく要素が強いことが特徴です。
どちらも似ているように思われる言葉ですが、違う意味を持っている言葉として認識するようにしましょう。
業務プロセス改善の目的
ここでは、業務プロセス改善の目的について解説します。
- 業務効率化による業績向上
- 業務の属人化防止
- IT化の促進
それでは、1つずつ解説します。
業務効率化による業績向上
業務プロセス改善の目的の1つ目は、業務効率化による業績向上です。たとえば、過去の決算資料を参考にして資料をまとめようとしたときに、年度によってフォーマットがばらばらになっていたり、保管しているファイルの書式が統一されていないと、各ファイルの書式を統一することから対応することになり、ムダが発生します。
このような業務の「ムリ」「ムダ」「ムラ」を取り除き、業務の進行が効率的になるようにすることが業務プロセス改善の目的です。業務プロセス改善により業務効率化ができれば、組織全体の生産性向上の他、コスト削減にもつながります。また、新規の取り組みにリソースを集中させることもできるようになり、業績向上につながっていくでしょう。
業務の属人化防止
業務プロセス改善の目的の2つ目は、業務の属人化防止です。特定の人ではないとわからないオペレーションや特定の人ではないと成果を出すことができない仕事があると、その担当者の離職のタイミングで業務の進行が難しくなる場合があります。また、特定の人しか成果を出すことができない状態が続くことは組織として好ましくありません。このようなリスクを取り除くためにも業務プロセス改善は効果的です。
IT化の促進
業務プロセス改善の目的の3つ目は、IT化の促進です。労働人口の減少がさけばれている昨今、企業の業務効率化を行うためにIT化の促進は必須と言えるでしょう。業務プロセス改善では、ITツールを導入することも多く、コスト削減にもつながる事例も多くあります。IT化の促進をするために、業務プロセス改善を行うことは大いに有効であると言えます。
業務プロセス改善の手順
ここでは、業務プロセス改善の手順について解説します。
- 現状分析をし課題を把握
- 改善する分野の優先順位をつける
- 具体的な改善案を作成
- 改善案を実施
- 定期的に改善施策を見直す
それでは、1つずつ解説します。
現状分析をし課題を把握
1つ目は、現状分析をし課題を把握することです。各業務フローにおける問題点を洗い出すことで、「人事異動を行うにあたって、人事と各部署の連携体制がとれていない」「ある特定の業務に工数がかかりすぎている」という課題が発見できるかもしれません。課題が把握できれば、具体的な改善施策も検討できます。
改善する分野の優先順位をつける
2つ目は、改善する分野の優先順位をつけることです。現状の課題を把握できたら、その課題を解決するためにかかる日数、工数、解決することでどの程度効果があるのか見込みを算出し、改善する課題の優先順位を決めていきます。
あとで改善した結果が振り返れるように、KPI(重要業績評価指標)の設定をすることで、実施後の評価ができるようにしておくと改善の効果があったのか見直すことが可能です。
具体的な改善案を作成
3つ目は、具体的な改善案を作成することです。業務プロセスの課題を把握し、課題を解決する有効性と現実的に解決できるのか現実性を加味したうえで、改善に取り組む課題の優先順位をつけたら、改善案を考えます。
改善案は、労働時間・経費の削減、IT化の促進という目的を実現できるような内容にすることを意識しながら考えるようにしましょう。
改善案を実施
4つ目は、改善案を実施します。改善案を実施するときは、まず小規模で効果が出やすそうな施策から展開していくとよいでしょう。理由としては、改善の効果があらわれるのには、一定の期間を要するため、少しずつ成功事例を積み上げ、経営層と現場の理解を得ていく方が得策であるためです。最初から大々的な改善に取り組み失敗してしまうと、継続的に業務プロセスの改善に取り組むことが難しくなってしまう場合があります。そうならないように注意するようにしましょう。
定期的に改善施策を見直す
5つ目は、定期的に改善施策を見直すことです。改善施策を実施したからといって、一度に業務プロセスの改善ができるわけではありません。そのため、改善施策を実施して一定期間経ったら、定めたKPIに対してどの程度目標が達成されているのか確認するようにしましょう。PDCAサイクルを回し、試行錯誤を繰り返すことで業務プロセス改善を進めていくようにします。
業務プロセス改善に活用できるフレームワーク
ここでは、業務プロセス改善に活用できるフレームワークについて解説します。
- KPT
- ロジックツリー
- バリューチェーン
- PDCA
それでは、1つずつ解説します。
KPT
1つ目のフレームワークは、KPTです。KPTは、「Keep(続ける)」「Problem(問題点)」「Try(挑戦する)」の頭文字をとったもので、「ふりかえり」によって業務改善を行うフレームワークです。
具体的には、付箋やホワイドボードに今後も続けていきたいこと(Keep)を書き出します。次に、今後はやめるべきことなどの問題点(Problem)を書き出します。そして、問題を解決するアイデアをいくつか列挙し次に取り組むこと(Try)を決めていきます。
KPTは、日々の振り返りに適しており、良かったこと・悪かったことの両方を振り返りながら業務改善に取り組めるフレームワークです。
ロジックツリー
2つ目は、ロジックツリーです。ロジックツリーは、樹形図を使用して問題の原因を掘り下げていくフレームワークです。たとえば、残業時間削減を行う場合、残業時間が多い原因をツリー状で書き出していきます。人手不足が原因であれば、なぜ人手不足に陥っているのかを要素分解していきます。業務量が多いことが原因であれば、なぜ業務量が多いのかを要素分解していきます。
解決策が見つかるまで、なぜその問題が起きているのか原因を書き出していくことで、ボトルネックの特定ができるようになります。
バリューチェーン
3つ目は、バリューチェーンです。バリューチェーンは、商品・サービスが顧客に届くまでの企業の活動の流れをモノの流れとしてだけではなく、一連の流れを価値の連鎖として把握したものです。この企画→開発→生産→流通→販売→サポートの各工程の中で自社が付加価値を出している行程は何かを把握することで、自社の強みはどこにあるのかを把握することができます。反対に自社の付加価値の低い業務は何かも把握できるため、業務プロセス改善をするための課題の把握にもつながります。
PDCA
4つ目は、PDCAです。PDCAは、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」の頭文字をとった言葉です。PDCAは、目標を設定し解決策を計画し、実行した後に、効果があったのか評価をし、解決策に問題があれば改善案を再度実行するという実施と評価を繰り返すフレームワークです。PDCAを回すことで実施する戦略の品質を高めることが可能です。
業務プロセス改善に役立つツール
ここでは、業務プロセス改善に役立つツールについて解説します。
- コミュニケーションツール
- プロジェクト管理ツール
- RPAツール
- ワークフローシステム
それでは、1つずつ解説します。
コミュニケーションツール
1つ目は、コミュニケーションツールです。ビデオ会議システムやチャットなどのコミュニケーションツールは、リモートワークをする上で、必須ツールであり、チームの情報共有を円滑に行うことができる業務プロセス改善に役立つツールと言えます。ビデオ会議システムにより、遠隔地の会議に移動することなく参加できるため、時間と経費の削減にもつながります。
プロジェクト管理ツール
2つ目は、プロジェクト管理ツールです。プロジェクト管理ツールは、ToDoリストやアラート機能がついているため、タスクの見落としやタスクの失念防止をする効果があります。自身のタスク管理にも使用できますし、部下がいるようであれば、チーム全体のプロジェクトの進捗管理の他、部下のタスクの進捗なども把握しながらプロジェクトを進行することができます。
RPAツール
3つ目は、RPAツールです。RPAツールは、Robotic Process Automationの頭文字をとったもので、これまで人間のみが対応できていた入力作業などを自動化するためのツールです。企業によっては単純作業と言えど入力作業に多くの時間を割いている場合もあり、これがRPAにより自動化されることで空き時間ができるようになります。そのため、限られたリソースを人間にしかできない創造性が必要な仕事に割くことが可能です。
ワークフローシステム
4つ目は、ワークフローシステムです。ワークフローシステムは、申請・承認する業務をペーパーレスで行えるように、紙の申請書や伝票を申請フォームとして電子化し承認・回覧できるシステムです。電子化による入力漏れなどの自動チェック、金額の自動計算などの記入時間の削減にもつながり、業務効率化を図ることができます。
業務プロセス改善における注意点
ここでは、業務プロセス改善における注意点について解説します。
- 改善施策の効果測定をする仕組みがない
- 目標のみを掲げ具体的な施策がない
- 組織全体が変化を望まない
それでは、1つずつ解説します。
改善施策の効果測定をする仕組みがない
業務プロセス改善における注意点の1つ目は、改善施策の効果測定をする仕組みがないことです。業務プロセス改善をする際に、やりっぱなしにするのではなく、途中経過や結果の効果測定を定期的に行い、どの程度目標に達しているのかを見直すようにすることが重要です。評価をしなければ、改善施策を実施しても、何が変わったのかもわからないため、良いとも悪いとも言えないことになります。
目標のみを掲げ具体的な施策がない
業務プロセス改善における注意点の2つ目は、目標のみを掲げ、具体的な施策がないことです。具体的には、「有給取得を奨励する」「男性の育休を推奨する」「残業時間を前年比2割減」など目標だけ立てて、具体的にその目標を達成するための施策がない場合です。具体的な施策がない場合は、業務プロセス改善のしようもないです。
組織全体が変化を望まない
業務プロセス改善における注意点の3つ目は、組織全体が変化を望まないことです。業務プロセス改善をするにあたって、自分が負担を被る可能性があると認識してしまう人や、労働時間が減り給与が減ってしまうと考えてしまう人がいると「現状のままでいい」とどうしても思ってしまうものです。
まずは、業務プロセス改善をするにあたって、どのようなメリットがあるのかを組織全体に共有することをはじめ、ネガティブに感じさせないようにすることから始める必要があります。
業務プロセス改善が機能していない場合の解決策
ここでは、業務プロセス改善が機能していない場合の解決策について解説します。
- 組織全体に改善する理由を共有する
- PDCAを回して改善施策を振り返る
- DX推進・働き方改革などの具体策を再検討する
- 業務改善コンサルに依頼する
それでは、1つずつ解説します。
組織全体に改善する理由を共有する
1つ目の解決策は、組織全体に改善する理由を共有することです。業務プロセス改善を行うのは、従業員です。そのため、従業員に対して、その業務プロセス改善を行うと残業が減らせること、業務不可が軽減すること、在宅ワークや育児のために休暇取得もしやすくなることなどのメリットを伝えたうえで、業務プロセス改善を行うことがよいでしょう。
もちろん、命令ということで、業務プロセス改善の指示は出せなくはないですが、今の時代には合わない方法と言えます。
PDCAを回して改善施策を振り返る
2つ目は、PDCAを回して改善施策を振り返ることです。業務プロセス改善を行うにあたり、現状の課題を把握したうえで、改善施策を実施したら、必ず定期的に評価を行い見直すことです。そのためにも、数値的な目標を設定し、プラスに改善されたのか評価できるような仕組みを設定することが必要です。PDCAを回し、より精緻な改善施策になるように努めることが重要です。
DX推進・働き方改革などの具体策を再検討する
3つ目は、DX推進・働き方改革などの具体策を再検討することです。業務プロセス改善を行うにあたり、現状と同じことをしていても何も変わりません、そのため、テレワーク・リモートワークができる環境の整備とITツールを活用した業務の自動化・ペーパーレス化などのDX推進と働き方改革などを組み合わせた具体的な改善施策を検討するようにしましょう。
一時的に残業時間が減ることで従業員の給与が減ってしまうことも考えられますが、中長期的に休暇などが取りやすく働きやすい環境になれば、従業員・経営者双方にとってメリットがある改善になってくるでしょう。
業務改善コンサルに依頼する
4つ目は、業務改善コンサルに依頼することです。業務プロセス改善を行うにあたって、課題を把握するためのフレームワークをうまく活用できない場合があるかもしれません。しかし、この業務改善コンサルに依頼すれば、業務プロセスの問題点や改善方法について一緒に考えてくれるでしょう。また、業務プロセス改善をきっかけに自社のDX化推進にもつながり、経営資源をうまく活用できるようになります。
まとめ
ここまで、業務プロセス改善にあたって、業務プロセス改善の手順、役に立つフレームワーク、ツール等を紹介してきました。業務プロセス改善を進めるにあたって、自社の課題を把握することがまずは重要ですが、組織全体に業務プロセス改善の意義というのを共有することを忘れないようにしましょう。
必ず業務プロセス改善をするメリットを共有したうえで、改善施策を実施し、中長期的な視点で施策の評価・見直しを行い、業務プロセス改善の進捗を定期的に確認することをおすすめします。