事業ポートフォリオとは?作成するメリット・作成方法・最適化のポイントをわかりやすく解説!
事業ポートフォリオの概要について知りたい
事業ポートフォリオを作成するメリットについて知りたい
事業ポートフォリオの作成方法について知りたい
企業経営において、事業を継続していくためにも限られた経営資源を正しく効率的に活用することが求められます。そのためにも、経験や勘ではなく、客観的に各事業の実態を把握できる資料として事業ポートフォリオを作成することが有用です。
今回は、各事業の実態を把握するために必要な事業ポートフォリオについて、概要から作成するメリット・作成方法を解説します。
目次
事業ポートフォリオとは?
事業ポートフォリオは、自社で利益を出している事業を一覧化したもので、事業の収益性・成長性・安全性を確認することができる指標になっています。そのため、どの事業に注力すべきなのか、どの事業は撤退をすべきなのかなどの判断に役立ち、事業ポートフォリオを最適化するということは限りある経営資源を適切に配分することにつながります。
事業を長期間続けるためにも、事業ポートフォリオの作成・見直しというのは定期的に実施する必要があります。事業ポートフォリオを作成するためには、自社の現状把握をしながら強みなどをあぶりだしていくため、M&Aをはじめ、さまざまなケースで活用できます。
事業ポートフォリオとM&Aの関係について
事業ポートフォリオは、自社の事業の状況を詳細に把握し、理解する上で必要な資料であるため、M&Aに活用されることが多いものです。たとえば、M&Aの目的が後継者不足により自社売却の場合、事業ポートフォリオがあれば、買い手に対して自社の事業内容の説明・理解をしてもらいやすくなります。
また、会社のスリム化をはかるために、事業譲渡を検討したいときに事業ポートフォリオから撤退する事業と注力すべき事業を選別するときにも活用できます。
事業ポートフォリオを作成するメリット
ここでは、事業ポートフォリオを作成するメリットについて解説します。
- 迅速な経営判断が可能
- 金融危機・ビジネスリスクの把握が可能
- 自社の競合が明確になる
- M&Aに活用できる
それでは、1つずつ解説します。
迅速な経営判断が可能
1つ目のメリットは、迅速な経営判断が可能なことです。事業ポートフォリオを作成するにあたって、自社の事業を把握する必要があるため、各事業の収益性・成長性・安全性を知ることができます。そのため、事業ポートフォリオを作成すると、どの事業にビジネスチャンスが隠れているのか把握することが可能となり、迅速な経営判断をすることが可能です。
金融危機・ビジネスリスクの把握が可能
2つ目のメリットは、金融危機・ビジネスリスクの把握が可能なことです。事業ポートフォリオを活用することで、コロナなどの外的要因による金融危機が来た時も、どの事業を改善すべきか把握しやすくなるため、リスクヘッジになります。また、事業ポートフォリオから不採算事業を把握し、撤退するのか・事業譲渡をするのかの判断もしやすくなります。
自社の競合が明確になる
3つ目のメリットは、自社の競合が明確になることです。事業ポートフォリオを作成することにより、自社の本当の競合相手がどの会社になるのか明確になります。理由としては、事業ポートフォリオの作成により、他社と比較した自社の強み・弱みを見極めることができ、どの製品・技術が独自性が欠けているのかなどを把握できるようになるためです。
事業ポートフォリオを用いて分析をした結果、競合は、実は予想していた会社ではないということもあるため、一度事業ポートフォリオ作成してみましょう。
M&Aに活用できる
M&Aは、市場の動向・社会情勢などの外部環境と自社の内部事情を鑑みて会社の売却・買収を行います。買い手に対して、自社の内部事情を説明する際に、自社の強み・弱みを俯瞰的に把握できる事業ポートフォリオを用いれば、買い手も自社を買収するメリットなどを把握することが可能です。そのため、M&Aにおいて事業ポートフォリオを活用することは一般的です。
事業ポートフォリオの作成方法
ここでは、事業ポートフォリオの作成方法について解説します。
- 現状把握するためのPPM分析
- 自社のメイン事業を決めるためのCFT分析
- 自社の強みであるコアコンピタンスの明確化
- ビジネスモデルの決定
それでは、1つずつ解説します。
現状把握するためのPPM分析
事業ポートフォリオを作成するにあたり、まず、自社の現状を把握する必要があります。その自社の現状を把握する方法として、一般的にPPM分析(プロダクトポートフォリオマネジメント分析)を活用します。
PPM分析は、下記の4つに分類し事業を分析していきます。
- 花形
- 金のなる木
- 問題児
- 負け犬
花形
花形とは、市場の成長率と占有率(シェア)が高い状態のことを言います。既に、一定の市場におけるシェアがあり、市場としても成長が見込める分野であるため、投資を惜しまずシェアの拡大を続けていけば収益を得られる分野と言えます。ただし、花形の分野は、競合企業が多いため、投資を惜しまないようにすることが重要です。
また、市場成長率が落ちても、市場占有率が高ければ、継続的な収益が見込める金のなる木になるため、継続的な投資をすべき分野と言えます。
金のなる木
金のなる木は、市場の成長性は低いが、市場の占有率(シェア)が高く安定的な事業のことを言います。金のなる木は、現状以上の利益を獲得することは難しいものの、安定的な収益を獲得することができるため、コスト削減などにより利益率を高めるとより良い事業になっていきます。
また、市場の占有率が高く、流動性が低いため新たな競合参入の可能性が低いこともあり、この安定的な事業で獲得した収益は、花形・問題児の事業への投資に回していくことも検討するようにしましょう。
問題児
問題児は、市場の成長性が高い分野であっても、市場の占有率(シェア)が低い事業のことを言います。問題児は、多くの利益を獲得することは難しいのですが、市場の占有率を高めることで花形に成長する可能性があります。ただし、競合他社も多くいるため、事業維持のために、積極的な投資が必要になります。
具体的には、成長産業で商品・サービスがまだリリースしたばかりで、これから市場の占有率を高めていく事業が問題児に該当します。
投資以上の利益が見込めない場合は、撤退することも視野に入れる必要があります。
負け犬
負け犬は、市場の成長性が低く、市場の占有率(シェア)が低い事業が分類されます。この負け犬に分類される事業に関しては、追加投資をしても、得られる利益が少なく無駄になる可能性があります。そのため、早いうちに撤退を判断し、負け犬に投資をしていた資源を花形・問題児に投資するのが得策でしょう。
自社のメイン事業を決めるためのCFT分析
事業ポートフォリオを作成するにあたり、PPM分析を用いて現状を把握したら、次に、自社のメイン事業を決める必要があります。自社の注力すべき事業を決めるにあたり、CFT分析を用います。
CFT分析は、以下の観点から事業ドメイン(自社の注力する領域・事業)を設定します。
- 顧客(Customer)
- 機能(Function)
- 技術(Technology)
つまるところ、「誰に・何を・どのような技術で提供するのか」を整理するのがCFT分析です。以下、詳細です。
顧客(Customer)
顧客(Customer)は、自社の商品にあう顧客層を市場分析から客観的に把握します。年齢・性別・居住地などを絞り、ターゲットを明確にすることで、誰に対して事業を展開していくのかを決めていきます。ユーザーのニーズを正しく把握するためには、顧客軸が欠かせません。
機能(Function)
機能(Function)は、顧客に対して機能面でどのような価値・利益を提供できるのかを決めていくことです。機能(Function)は、事業ドメインを決めるにあたり、最も重要と言えます。理由としては、この機能(Function)によって自社の強みを明確にし、競合他社と差別化ができれば事業の成功につながるためです。
技術(Technology)
技術(Technology)は、どのような技術をもって顧客の求める価値を提供できるのかを特定します。他社にはない技術は何かを突き詰め、差別化を図ります。ここで言う技術は、研究・開発のみならず、他社には真似できない配送インフラなどの物流も含めた価値を提供するための力全般を指します。
自社の強みであるコア・コンピタンスの明確化
事業ポートフォリオを作成するにあたり、自社の強みであるコア・コンピタンスの明確化をしていきます。自社にしかない強み・技術があれば主力事業として推進していけます。
コア・コンピタンスの評価軸は、下記の5つがあります。
- 模倣可能性
- 移動可能性
- 代替可能性
- 希少性
- 耐久性
以下、詳細です。
模倣可能性
コア・コンピタンスの1つ目の評価軸は、模倣可能性です。他社が真似することができる可能性が高い場合は、コア・コンピタンスにはできません。そのため、他社が真似できないような技術が好ましいとされます。
移動可能性
コア・コンピタンスの2つ目の評価軸は、移動可能性です。移動可能性とは、他の分野でも利用できるような可能性のことを意味します。汎用性が高い技術の場合、他の事業の拡大にも活用できる可能性があるため、コア・コンピタンスに適している技術と言えるでしょう。
代替可能性
コア・コンピタンスの3つ目の評価軸は、代替可能性です。他の技術・商品・サービスで代替できる場合は、簡単に他社にシェアを奪われてしまいます。そのため、代替できない技術・商品・サービスを展開し、新規参入を寄せ付けないようにしましょう。
希少性
コア・コンピタンスの4つ目の評価軸は、希少性です。その技術が珍しいと思われたり、画期的であり希少価値が高いものであるかを判断します。希少性が高い技術の場合、新しい需要の獲得が狙える可能性が出てきます。模倣可能性・代替可能性が低い場合は、自然にこの希少性が高まる傾向にあります。
耐久性
コア・コンピタンスの5つ目の評価軸は、耐久性です。世の中に長く活用される技術・商品・サービスをコア・コンピタンスにしないと、一時的に売上が伸びても事業の継続が難しくなります。そのため、一時的なブームで終わらない技術・商品を開発したり、ブランド発信したりすることで、長くユーザーに使用される工夫をしていく必要があります。
ビジネスモデルの決定
事業ポートフォリオを作成するにあたり、最後にビジネスモデルの決定をします。ビジネスモデルの決定を行うにあたり、当初定めた企業理念と合致しているのかを確認するようにしましょう。事業ポートフォリオの作成は、利益をあげることだけが目的ではありません。自社が目指す姿は何かを明確にし、ビジネスモデルの決定をしましょう。
事業ポートフォリオを最適化するポイント
ここでは、事業ポートフォリオを最適化するポイントについて解説します。
- 事業ポートフォリオマネジメントで投資の優先順位を決める
- ガバナンスを強化しトップの意思決定が通るようにする
- 定期的な分析・評価を行う
それでは、1つずつ解説します。
事業ポートフォリオマネジメントで投資の優先順位を決める
1つ目のポイントは、事業ポートフォリオマネジメントで投資の優先順位を決めることです。事業ポートフォリオマネジメントは、経営資源を効率的に活用し、企業価値を最大化させることを目的としています。
そのため、事業戦略を組み替える際に、どの事業に優先的に投資を行うのかPPM分析を通じて各事業の状況を把握し、投資優先順位を決定する事業の選択と集中が必要です。
ガバナンスを強化しトップの意思決定が通るようにする
2つ目のポイントは、ガバナンスを強化しトップの意思決定が通るようにすることです。トップマネジメントによるガバナンスがしっかりしている企業は、現場従業員の管理をするための組織体制もしっかりしているため、事業をスムーズに進めることができていると言えます。
逆に、ガバナンスが弱く、経営陣の指示を守らない組織の場合、どの事業の効率が悪いのか実態を把握することが難しいため、正しく事業ポートフォリオを作成することができません。
意思決定の統制を図るために、ガバナンスを強化し、経営陣の判断がスムーズに行える組織体制づくりが必要です。
定期的な分析・評価を行う
3つ目のポイントは、定期的な分析・評価を行うことです。事業ポートフォリオを一度作成してから時間が経過すれば、市場や競合の外部環境は変化している可能性があります。そのため、今の事業ポートフォリオを改めて定期的に分析・評価を行い、各事業の実態を把握する必要があります。
まとめ
ここまで、事業ポートフォリオの概要・M&A・作成するメリット・作成方法を紹介してきました。限られた経営資源をうまく活用し、企業価値を向上させるために事業ポートフォリオの作成は必須と言えます。事業ポートフォリオを作成するためのPPM分析を通して、収益が出ている事業と不採算事業を区分して、今後の企業価値向上のために迅速な経営判断ができる環境を整えていくことが重要です。