【ユーザー対談】デンソーのデータ活用基盤の構築とユーザーへの浸透の取り組みを実体験から学ぶ!【Part 2】
2014年にホストコンピューターで行ってきたエンドユーザーによるデータ活用基盤をYellowfinにリプレースすることを決め、構築、導入、展開まで行ってきたデンソー。
その過程で同社が乗り越えた苦労や成功事例が優れた取り組みであったと認められ、2020年2月に日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)によるデータマネジメント賞のアナリティクス賞を受賞した。
対談形式でおこなったインタビューをもとに、【Part 1】では、BIツールの選定目的や選定のポイント、導入後の課題などについてご紹介しました。
今回の【Part 2】では、Yellowfinを全社でより多くの人に活用してもらうための取り組みなどについて、詳しくご紹介します。
目次
挫折期を乗り越えるため、NTTテクノクロスをパートナーに
林: 私も当時のことを覚えていますが、月例会というのがあって、参加すると雰囲気がどうしようという感じでしたね。
弊社としては何かの形で使っていただきたいという想いはありましたが、これはもう難しいのかなという気持ちもありました。
香田: お話しするにしても、当時は明るい話題が全然なかったんですよね。
林: そうでしたね (笑)
香田: 悪い話題しかなくて、新しい話もなくて、林さんに東京から来ていただくんですけども15分とか20分で帰っていただくとか、そんなこともありましたね。
林:(笑)その後、そんな状況を変えようと思ったきっかけについて教えていただけますか?
香田: Yellowfinを全社でもっと活用してもらいたいという気持ちと、会社から任された仕事をここで投げ出すのは悔しいという気持ちの両方がありました。
そこでこれから新たに始まるプロジェクトにYellowfinを活用してもらおうと、方針を180度変えました。
林: 始まりはYellowfinをホストのデータ参照で、紆余曲折あってデータ活用の基盤にしようと目的が変更になったんですね。
香田: はい。デンソー社内には、最近のシステムでもデータをダウンロードしてエクセルで集計して、メールに添付して配布するという業務が山のようにありました。
それをYellowfinに移行すれば、ダウンロードやエクセルでの集計、メールで送付する必要がなくなります。
そういう業務に使ってこそ、BIツールの真価が発揮できると考えました。
当初、基幹システムを目的としたYellowfinへの置き換えは、データをダウンロードするだけというBIツールらしい使い方ではないと考えていたので、BIツールらしい使い方を社内に広めたいという強い想いがありました。
林: なるほど。BIツールも様々な使われ方があって、もちろん基本的なレポーティングツールとしても使われることはありますが、データを他のシステムに渡すためにダウンロードしたりとか、まあこれは本当にベーシックな使い方なんですが、あるにはあります。
その中で、データをもっと活用する基盤としてBIを使っていこうとお考えになられたんですね。
ここから取り組みの話なんですが、その構想を支援するパートナーとしてNTTテクノクロスさんにお声がけされたんでしょうか?
香田: そうですね。それまでは自己流でやってきたことで、あまりうまい使い方ができていませんでした。
一度、うまい使い方やコンサルティングができる会社の方と仕事がしたいと考え、NTTテクノクロスさんと一緒に取り組むことにしました。
林:エキスパートを入れてやっていこうと。
香田: そうですね。Yellowfinをうまく使える方達とですね。
最初は何から始めたら良いか分からなかったので、当時デンソーに来ていただいていたNTTテクノクロスの桂田さんと膝を突き合わせながら議論しましたね。
何から始めれば活用を広げることができるのか、そういう相談からのスタートでした。
ログインアカウントを持つユーザーにアンケートを実施
林: それで、どんなことから始められたんですか?
香田: Yellowfinの利用者が少ないながらも毎日使ってくれているユーザーも一定数いたので、ぜひその人達の声を聴いてみたいと考え、Yellowfinのログインアカウント持っているユーザー1700人全員に対し、アンケートを採ることから始めました。
設問は下記の8つです。
- 「Yellowfinを利用したきっかけは何か」
- 「あなたの部署でYellowfinはどの程度知られているか」
- 「日々の業務でどのくらい定着しているか」
- 「業務にどのように使っているのか」
- 「あなたの習熟レベルはどのくらいか」
- 「Yellowfinの操作方法はどうやって知ったのか」
- 「もし社内で勉強会を開催したら参加したいか」
- 「Yellowfinが社内で利用できることをどうやって知ったのか?」
アンケートの回答により、見えてきたことがありました。「あなたの部署でYellowfinはどの程度知られているか」という問いに対して、「数名が知っている」と回答した人は37%、「ほとんど知られていない」と回答した人は23%、計60%の人がYellowfinの知名度は低いと回答したのです。
その一方で、「もし勉強会を開催したら参加したいか」という問いには、半分の人が「参加したい」と回答したのです。
ここに活路があると感じました。
より多くの人にYellowfinを使ってもらうために何をすればよいか。
このアイデア出しの検討にはNTTテクノクロスの北川さんや石黒さん、Yellowfinの林さんにも参加していただきました。
林: そうでしたね。デンソーさんの名古屋オフィスにお伺いしましたね。
香田: 目的は「多くの人に知ってもらうこと」、すでに使っていただいている人にもっと「上手に使ってもらうこと」の2つ。
多くの人に知ってもらうための施策としては、多くの人の目に触れるキラーコンテンツを作ることを考えました。
上手に使ってもらうための施策としては、勉強会を開催することにしました。それから自由意見の中には、レスポンスが悪いと答えた人がかなりいました。
林: ここはカットします (笑)
石黒: 事実ですから (笑)
林: ちょっと待ってください (笑) ここはきちんとご説明いただかないと悪い噂がたちます (笑)
香田: そうそう、これから話しますので (笑)
使い方の悪さがYellowfinのパフォーマンスに影響
林: 理由があったということですね。
香田: テクノクロスさんに入っていただくまでは、私もYellowfinのレスポンスが遅いのは、製品やサーバのせいだと思い込み、そこだけを集中して改善していたんです。
ですが、テクノクロスさんから、使い方に問題があると指摘をうけたのです。
Yellowfinは誰でも使える簡単なツールという触れ込みで社内に展開していたのですが、実は簡単だけどお作法があり、それに則らないとレスポンスが遅くなるんです。
お作法を教えないことで、Yellowfin=遅いという間違った意識をもたれていた。
Yellowfinを快適に使うための作法を教える勉強会を最初に行いました。
林: 具体的に何がパフォーマンスに影響をもたらしていたのでしょう?
石黒: 一番大きいのはフィルターですね。そもそもフィルター自体を知らなかったんですね。
林: あー...。なるほど。
石黒: だから、テーブルにあるデータを単純に放り込んで抽出するという使い方をしていました。
林: 全データを抽出するという感じで?
石黒: そうなんです。それが当たり前に使われていたんですよね。
香田: そのデータが大きいので、それを全部放り込むと遅いんですよ。
林: なるほどですねー。
石黒: 加えて、おそらく、ホストを使っている方の慣習なのか、テーブルの項目が100あると、それを全部レポートに入れるんですね。
要するにダウンロードツールとして使っているので、とりあえず使わないかもしれないけど、外に出しておけばどこかで使うかも知れないみたいな。
香田: そしてダウンロードした後にエクセルで絞る。
しかも作ったレポートを繰り返し使うのではなく、毎回新規に作ることもしていました。
石黒: そうですね。Excelのオートフィルターを使うみたいな (笑)
林: 要は、エクセルの列が100とか、行が何十万件っていうデータを描画してダウンロードして、エクセルで加工していたと。
香田: そうですね。
林: 他のベンダーのツールを使ってらっしゃる方もこの記事をみていらっしゃるかも知れませんが、その使い方だと、どこのベンダーのツールでもパフォーマンスは同じですよね。
香田: そうだと思いますね。BIツールの性能ではなく、データベース、ネットワーク、サーバーの性能です。
林: ここはメーカーとしてははっきりさせておかないと (笑)
一同 笑
香田: しかも、一度レポートを作っておけば繰り返し利用できるのに、それを毎回、一から作るみたいなこともやってたんですよ。
だから、保存されていないドラフト(編集中)レポートが山のようにあるんですよ。毎回新規作成なので。
林: え? 毎回新しく作られてたんですか?
石黒: そういう風に使うように教えられてきてるんですよ。
林: 誰が教えたんだろう?
石黒: あまり使ったことのない人が、教えていくという感じなので、そうなってしまったんではないかと。
林: これはお聞きしなかったんですが、香田さんはYellowfinの使い方について、対面でエンドユーザーさんに説明したことはあったのでしょうか?
香田: 以前はエンドユーザーに会うことはほとんどありませんでした。
林: なるほど、進め方自体が、マニュアルか何かを用意しておいて、使ってくださいね、みたいな感じだったんですかね?
香田: そうですね。教育コンテンツを用意していたので、それで自習してくださいと。
私がユーザーと会うときは、嫌な監査官として、「これまで何個レポートを移行したのか。今月ここまで移行しないと上司に報告しますからね」と、そんなことを常にエンドユーザーには言っていましたね。
一同 笑
林: 目的が違うので、進め方も必然的にそうなってくるということですね。
なるほどー。それで、勉強会を実施した際のユーザーさんの反応はいかがでしたか?
香田: こんな機能があるのかと、驚いていました。「これをやれば早くなるね」と、参加していただいた方のYellowfinに対する意識は大きく変わったと思います。
林: そこからコアなユーザーさんが増えていったんですか?
香田: そうですね。新しい発見や聞けば教えてくれる人がいるので、みんなどんどん質問してくれるんです。
参加者が増え、使う人が増えると、さらに突っ込んだ質問をする人も増えました。
ようやくエンドユーザーの顔が見えた気がしました。そこでどんな風に活用したいのか、ヒアリングをしたりしました。
林: 彼らがやりたいと思ったことを一緒に作ることを始めたのですね。
香田: そうです。ユーザーが作ったレポートを見ながら、一緒に作るという形の相談会を始めました。
その場にはテクノクロスさんにも来ていただき、ユーザーがやりたいことができるよう、教えてくれたのです。
自分ができないことって、結局ツールでできないことになってしまうんですね。
ただ、こういうものを作りたいという想いはあるので、それをテクノクロスさんが教えてくれる。そこから、いいレポート作りのキャッチボールができるようになって、ユーザーからの満足度も上がっていきました。
そういう相談会を2週間に1度のペースで開催しました。
林: 石黒さんが対応した中で印象に残っていることがあれば教えてもらえますか?
石黒: 基本的に相談会に来られる方はみなさんちゃんと目的があり、向上心が高かったですね。
教えたことをみなさん着実に実行し、成果を出してくれるので、サポートしたくなる人ばかりでした。
受けてくれた人みなさんそうでしたね。またホストからの移行は3%に留まっていましたが、相談会を開催したことで、「Yellowfinでここまでできるのなら」と能動的に移行したいという人も増えました。
前は単純な移行だったんですが、相談会後はYellowfinにするとここが便利になるからという置き換えですね。
なので、そこに向かう姿勢がまったく違うんですよね。ですので、ユーザーさんも継続的に使ってもらえるようになりました。
それ以降アクティブユーザーは圧倒的に増えていったと思います。
香田: Yellowfinさんの特別の計らいで、名古屋で2日間の講習を開催していただいたことも大きかったですね。
多くの人に教育を受けていただいいたことで知識をより深めることができました。
林: 累計で40人ぐらい参加していただいたかと思うんですけども、一つの企業でこんなに、大勢の方に参加していただいたのは初めてのことです。
やりたいという人の熱意というか、前向きな姿勢はすごいなと思いましたね。
1日目の講習が終わった後に、簡単な懇親会を開いたのですが、その場でも「現場でこんなことに困っているんです」とか「こんなデータを分析したいんだ」と言う話が出たことも面白かったですね。
ユニークログイン数は1年で約3倍に
香田: はじめ相談会は本社地区でしか行っていなかったのですが、他の地域の製作所でも出張相談会を開くこともでき、エンドユーザーの顔がどんどん見えるようになりました。
それと共にユーザー数も増え、ピーク時には月間ユニークログイン数が1万4000人になりました。
基幹システム刷新プロジェクトが中断したときのユニークログイン数が約2000人だったのが、昨年は平均でも月間6000人のログイン数なので、1年間で約3倍。すごい伸びだと思います。
林: なるほど。すごい伸び方ですね。この取り組みにものすごい効果があったんですね。
石黒: 香田さんの中で、「あ、Yellowfinが活用されてるな」とお感じになられたタイミングはあったんですか?
香田: Yellowfinでこんなことできますか?という相談が、直接私の所に来るようになり、社内でYellowfinが活用されているなと実感しました。
新規の相談ですね。あの人に聞いたんだけど、こういうことやりたいみたいな。
石黒: その頃の話をうちのメンバーと話をすると、「香田さん、楽しそうだよね」っていう話が出てくるんですよね。
香田:(笑)
石黒: 最初に関わらせていただいた時からの変化として感じています。
林: 最近、我々にも直接現場の製作所の方から「社内で使っているようなので、デモをしてください」など問い合わせも増えていますね。
直接、弊社のセミナーに申し込まれたりですね。
石黒: 勉強会や相談会に参加した方が、自分の知っている知識を横に広げてくださるんです。
それが横から横に平がって、ものすごい形でユーザー数が増えていく。
日々、数値をおいかけているのですが、その広がり方には目を見張るものがあります。
林: そういう改善したことを横にシェアしていくというのはデンソーさんの文化なのでしょうか。
香田: 業務改善やチームでの取り組みを全社に向けて発表する取り組みはずっと続けているので、横に広げる文化はあるのかもしれないですね。
北川: 我々のお客さまでもなかなかいらっしゃらないんですよね。多くの会社では勉強会に参加した人だけで知識が止まってしまうんですよね。
横に広げる文化が定着しているんだなーというのは私も感じました。
香田: 製造業は前工程から後工程へと流れがある。いろんな部門との横のつながりもある。
自分の部署の中だけでなく、社内に知り合いが多かったりするので、そういうことで広がっていくのかもしれません。