AIの精度向上に使いたい!データセットの意味や作り方などを一挙解説
AIデータセットの種類を整理したい
AIデータセットはどうすれば用意できる?
AIデータセットを取り扱う際の注意点は?
AIデータセットは、AIが機械学習でパターンを見つけ出すために使われる、データの集合体です。政府機関や大学などの外部機関からデータセットを取得できる場合もありますが、適したものがなければ新規作成しなければなりません。ただ、機械学習で使えるAIデータセットを作るには、正しい作り方で作る必要があります。また、取り扱い方を間違えると、分析精度の低下やトラブルの原因にもなりかねません。
この記事では、AIデータセットの意味や種類、用意する方法などを紹介します。
AIデータセットとは
データセットとは、コンピュータで単一単位として扱われるデータの集合体です。AIデータセットは、AIが機械学習でパターンを見つけ出すために使われるデータの集まりを意味し、その質が優れており量が多いほどAIのアルゴリズム精度が向上します。
ここでは、AIデータセットの種類を3つ紹介します。
- トレーニングセット
- バリデーションセット
- テストセット
それでは1つずつ紹介します。
関連記事:機械学習によるデータ分析とは?機械学習の種類・統計学との違い・手法や活用事例について詳しく解説!
トレーニングセット
AIデータセットの種類の1つ目は、トレーニングセットです。
トレーニングセットは、AI構築で最初に用いられる学習用データセットで、AIに基本的な知識を身につけさせる目的があります。学習方法の種類は、以下の3つに大別されます。また、最初に学習した後に新たなデータセットを使って精度向上を図る手法が、ファインチューニングです。
▼学習方法の種類
学習方法 | 概要 |
教師あり学習 | 明確な正解がわかるデータを学習させる手法 |
教師なし学習 | 明確な正解がないデータから、パターンや関連性より答えを導き出させる手法 |
強化学習 | 特定の結果に対し、AIに自ら最適解を学び取らせる手法 |
関連記事:機械学習を3種類に大別!代表的用途や手法の選定ポイントも解説
バリデーションセット
AIデータセットの種類の2つ目は、バリデーションセットです。
バリデーションセットは、トレーニングで得られたAIモデルのパラメータを調整するためのデータセットを意味します。層数やユニット数など、モデルの性能に影響を与えるパラメータの最適化が目的で、AIのパフォーマンス向上に寄与します。
テストセット
AIデータセットの種類の3つ目は、テストセットです。
テストセットは、開発されたAIモデルの性能を最終的に評価するためのデータセットです。これまで使用したものとは異なるデータセットを用い、AIモデルがどれだけ正確に予測・生成を行えるか検証します。
AIデータセットを用意する手段
ここでは、AIデータセットを用意する手段を3つ紹介します。
- 外部データの活用
- 自社作成
- アウトソーシング
それでは1つずつ紹介します。
外部データの活用
AIデータセットを用意する手段の1つ目は、外部データの活用です。
多くの政府機関や企業、大学などが、AIの学習に使えるほど質や量が優れたデータセットを公開しています。「データセット 無料」や「オープンデータセット」などと検索すれば、多種多様なデータセットが見つかるため、まずはその中で自社のAI開発に使えるものはないか探してみましょう。
自社作成
AIデータセットを用意する手段の2つ目は、自社作成です。
AIの学習に適した外部データがなければ、社内に蓄積されたデータやアンケート結果などを活用して、オリジナルのデータセットを作成してもよいでしょう。後述のアウトソーシングと比較して費用を抑えられる一方で、データ収集・整理などの作業に手間と時間がかかる点に注意が必要です。また、詳細は後述しますが、インターネット上から収集した画像やテキストデータを利用する場合には、商用利用が可能か確認しておかないと著作権が問題になりかねません。
アウトソーシング
AIデータセットを用意する手段の3つ目は、アウトソーシングです。
データ収集・整理などの作業は、自社で実施せず専門業者にアウトソーシングする方法もあります。アウトソーシング代はかかりますが、自社のリソースをかけずに高品質なデータセットを短期間で入手することが期待できるでしょう。特に、大規模なデータセットが必要な場合は自社だけでは限界があるため、アウトソーシングがおすすめです。また、専門的知識がないとデータセットをうまくまとめられない場合は、自社の技術力に自信がなければ技術力に定評があるアウトソーシング先を使うとよいでしょう。
AIデータセットの作り方
ここでは、AIデータセットの作り方を4つ紹介します。
- 課題・仮説設定
- データ収集
- データ加工
- データ分割
それでは1つずつ紹介します。
課題・仮説設定
AIデータセットの作り方の1つ目は、課題・仮説設定です。
データセットを作成する前に、まずはAIの機械学習で解決したい課題や目的を明確にしましょう。このプロセスがないと、必要なデータの種類や量が定まりません。また、事前に仮説を立てることで、得られたデータの分析・検証が容易になるでしょう。データセットの作成を効率よく行い、かつ実務で役立つデータセットを作成するためにも、この過程は外せません。
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データ収集
AIデータセットの作り方の2つ目は、データ収集です。
データセットでは、データの質と量で機械学習の精度は大きく変わります。収集するデータの量が足りないと、学習データに適合しても新たなデータは予測できないモデルを生み出す結果になります(オーバーフィッティング)。また、教師あり学習の場合は、機械学習モデルに学習させる各データに正解ラベルとなる教師データ(正解ラベル)を付与することが必要です(アノテーション)。さらに、データ整形時には以下の4条件を全て満たす「整然データ」を意識しましょう。
▼整然データの条件
- 1つのセルには1つのデータが存在
- 1つの列は1つの変数をあらわす
- 1つの行は1つの観測をあらわす
- 個々の観測ユニットの類型が1つの表を形成
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データ加工
AIデータセットの作り方の3つ目は、データ加工です。
コンピュータが読み取りやすいよう、収集したデータの加工を行いましょう。主なデータ加工方法は、以下の3つです。
▼データ加工方法
データ加工方法 | 概要 |
欠損値の処理
|
本来あるはずのデータが記録されていない場合、その欠損値が原因で分析が不可能になる恐れがある。欠損値を含むサンプルの削除や、統計学的な予測値で欠損値を仮に補完するなどの方法で対応が必要。 |
ダミー数変化 | 「はい・いいね」を「はい」=0、「いいえ」=1とするなど、本来数字で表せないデータを数字で表すことがダミー数変化。これにより、本来数字で表せないデータを統計分析することが可能になる。 |
外れ値・異常値の除去 | 外れ値は他の計測値から極端に離れた値で、異常値は入力ミスや計測不備などで不可解な値を意味する。除去する場合は、欠損値の処理と同じ要領で行う。ただ、外れ値は何か意味をもち、あえて除去すべきでないケースもありうる。 |
データ分割
AIデータセットの作り方の4つ目は、データ分割です。
加工済のデータを、「トレーニングセット」と「テストセット」に分割します。両者の比率はおおよそ「トレーニングセット」が7〜8割、「テストセット」が2〜3割を目安にしましょう。
AIデータセットを取り扱う際の注意点
ここでは、AIデータセットを取り扱う際の注意点を4つ紹介します。
- 自社業務に最適なデータセットの選択
- 余計なデータの排除
- 検証・改善の実施
- 著作権侵害のリスク回避
それでは1つずつ紹介します。
自社業務に最適なデータセットの選択
AIデータセットを取り扱う際の注意点の1つ目は、自社業務に最適なデータセットの選択です。
データセットにはさまざまな種類がありますが、自社の目的や用途に合ったデータセットを選ばないと期待通りの結果を得られない可能性があります。また、平均的なデータがそろったデータセットを活用することで、より汎用性の高いモデルを構築できるでしょう。
関連記事:AIアルゴリズムとは?主な種類から今後の展望まで一挙解説!
余計なデータの排除
AIデータセットを取り扱う際の注意点の2つ目は、余計なデータの排除です。
前述のとおり、明らかに誤りのあるデータや分析に役立たないデータがあると、分析精度の低下につながりかねません。そのような余計なデータを排除することで、機械学習モデルの精度向上が期待できます。
検証・改善の実施
AIデータセットを取り扱う際の注意点の3つ目は、検証・改善の実施です。
データセットを一度作成しても終わりせず、継続的に検証・改善していきましょう。実運用の中で新たな課題が発見されることもありうるため、定期的に見直し、必要に応じてデータセットを更新しなければなりません。
著作権侵害のリスク回避
AIデータセットを取り扱う際の注意点の4つ目は、著作権侵害のリスク回避です。
特に、既存の画像・動画等データを使用する場合は、権利関係はよく確認し、著作権法に違反しないよう注意しましょう。画像等の利用規約を確認し、必要であれば適切な手続きを踏んでから利用しなければなりません。
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まとめ
この記事では、AIデータセットの意味や種類、用意する方法などを紹介しました。
AIデータセットは、機械学習でパターンを見つけ出すために必要なデータの集合体で、その質と量が機械学習アルゴリズムの精度を左右します。種類は、トレーニングセットとバリデーションセット、さらにテストセットの3種類です。政府機関などの外部データをそのままAIデータセットとして使える場合もありますが、不可能であれば課題設定からデータ分割までのプロセスを踏んで新規作成しましょう。
また、業務に最適なデータセットの選択や余分なデータの排除などを行うことで、分析精度を向上できます。また、画像・動画データをデータセットとして活用する場合には、著作権にも注意しておきましょう。